AIを成果につなげられる企業は何が違うのか
企業の持続的成長や競争力強化に向け、IT投資の主軸は「業務効率化のためのコスト」から「経営戦略を実行するための基盤」へと大きく変化している。中でも生成AIの登場は、企業の働き方やビジネスモデルそのものを塗り替えるインパクトを持つ。しかし現状、多くの日本企業では「AIを導入したものの、一部の関心が高い社員が使っているだけ」「PoC(概念実証)を繰り返すばかりで業務成果につながらない」といった壁にぶつかっている。
代表取締役社長
牧田 幸弘 氏
なぜ、日本企業のAI活用は「導入」で止まってしまうのか。JBS創業者で代表取締役社長の牧田幸弘氏は、その根本要因をこう分析する。
「多くの企業においては、AIという新しいテクノロジーを生かすための『前提条件』が整っていません。全社員がスムーズにアクセスできる高速ネットワークや最新のデバイス、データを安全に扱うためのセキュリティー環境やガバナンス、そして社員への教育といったデジタル基盤が未整備なまま、ツールだけを導入しようとしているからです。基盤がない状態でAIを導入しても、現場は混乱し、従来の仕事のやり方から抜け出すことができません。企業がAIで変わるためには、環境整備から業務プロセスの変革までを一貫して見直し、日常に落とし込む仕組みが必要不可欠なのです」
慶応大学卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社、トップセールスとして活躍した牧田氏は、1990年にJBSを設立。「1つの製品やメーカーに縛られず、真にお客様の課題解決に寄り添った提案をしたい」という思いから独立系SIerとしての歩みをスタートさせた。以来、同社は日本を代表するエンタープライズ(大手企業)のITインフラやクラウド活用を支援してきたが、AI時代を迎えた今、その支援のあり方は従来のシステム構築の域をはるかに超えている。
約3000人の全社員がAIを使い倒す。社内の1次情報が変える顧客への提案品質
JBSの取り組みにおいて極めて特徴的なのが、顧客へ提案するテクノロジーを、まず自社で徹底的に使い倒す「自社実証(リアルショーケース)」というアプローチだ。これは単なる社内施策やイベントではない。顧客に提供する提案や支援の品質を極限まで高めるための「実践知の蓄積プロセス」である。
「『このAIを使えば業務が変わります』と口頭で伝えるのは簡単です。しかし、実際に自社の業務で使ってみなければ、どこでつまずくのか、どう運用すれば現場に定着するのかといったリアルな課題はわかりません。だからこそJBSでは、約3000人の全社員がAIを日常業務で使い倒す環境を整えています。エンジニアの比率が約76%を占める当社ですが、開発現場だけでなく、人事や総務、経理といったコーポレート部門の社員まで含めた『全社員がユーザー』として、日々の実務にAIを組み込んでいます」
自社実証で得た実践知を顧客の変革支援へ生かす取り組みは、パートナー企業からも高い評価を受けている
同社では、Microsoft 365 Copilotをはじめ、Google GeminiやAnthropic Claudeを組み合わせた「マルチAIモデル」を全社的に検証している。
全社員がAIを日常使いすることで、現場にはマニュアルには載っていない「1次情報」と「成功・失敗のノウハウ」が蓄積され、これが顧客支援における圧倒的な強みへと変わるのだ。
「例えば、経理担当者が実務の中でAIを使いこなし、経理業務とAI活用の両方に精通すれば、その社員はお客様の経理部門に対するリアルな変革コンサルティングができるようになるかもしれません。当社の営業やコンサルタントが商談の初期段階からお客様の深いニーズを捉え、実体験に基づいた対話ができるのは、自分たち自身が毎日AIを使い倒している当事者だからです。実務とAIの両方を理解した人材が寄り添うことで、初めて机上の空論ではない『成果の出るAI活用』が可能になります」
「言われたものを作る」から「適切な選択肢を示し、自走を促す」存在へ
日本企業がAI活用で成果を出すためのもう一つのハードルが、既存のIT業界の構造やパートナー選びにある。日本のIT市場では、特定のメーカーや系列グループとの関係性によって導入するシステムが決まってしまうケースも少なくない。
しかし、新しいシステムを導入するだけで企業変革が実現できるわけではない。既存のシステム、業務プロセス、セキュリティー要件、現場のITリテラシーは企業ごとに異なる。だからこそ必要なのは、個々の企業にとって必要で実効性の高い組み合わせを選び抜く力だ。独立系マルチベンダーであるJBSは、メーカーや系列の制約に縛られず、顧客の業務に合わせた適切な組み合わせを設計できる。この自由度こそが、AIを成果に変える実装力の源泉になっているのだという。
「1つのメーカーの製品しか扱えなければ、お客様の業務課題よりも『自社製品をどう売るか』が優先されてしまいます。私たちは独立系だからこそ、世界中の先進的なテクノロジーの中から、お客様の業務現場や既存システムにふさわしい選択肢を柔軟にカスタマイズして提案できるのです」
こうした「自社実証の実践知」と「独立系ならではの自由度」を組み合わせた伴走支援の成果は、すでに日本を代表する大手企業で実を結んでいる。JBSでは、単にツールを導入するだけでなく、現場の業務プロセスに入り込んだ定着支援を実施し、現場で使われ続ける仕組みづくりを重視している。
「私たちが目指しているのは、単に依頼されたシステムを作って納品することではありません。お客様の業務現場に深く入り込み、一緒にアイデアを出し合いながら新しい仕事のやり方をつくり出すことです。そして最終的には、当社が離れた後でも、その企業自身が社内のデジタル人材を使ってプロジェクトを自走できる状態をつくり上げること。それこそが、私たちが果たすべき伴走のゴールです」
「守り」ではない。AI活用を全社に広げるための前提条件
AI活用を阻む要因の1つが「セキュリティー」への不安だ。情報漏洩や著作権侵害、知財リスクを恐れてAIの利用範囲を狭めれば、その効果はほんの一部にとどまってしまう。牧田氏は「必要なのは、AIを制限することではなく、安心して全社展開ができる土台を整えることです」と話す。
JBSではセキュリティーを「リスクを防ぐための守りの施策」としては捉えていない。企業が思い切ってAI活用を本格化させるための「必須の前提条件(信頼性のあるブレーキ)」と位置づけているのだ。
「セキュリティーが不安だからとAIの利用を制限してしまっては、企業の競争力は奪われてしまいます。重要なのは、自社のセキュリティーレベルやリスクを正確に把握し、適切なガバナンスの土台を築くことです。例えば、当社が強みを持つMicrosoft Entra IDなどを活用した強力なアクセス管理やID統制という『不変の土台』をしっかり構築しておけば、企業は安心して全社規模で最新AIという『革新』を導入できます。セキュリティーという安心の基盤があるからこそ、AI活用は社内全体へと一気に広がるのです」
「導入支援」ではなく、「自走支援」へ
AIという革新的なテクノロジーの登場により、SIerに求められる役割は根本から変わった。「言われたとおりの仕様書に従ってシステムを構築する」受発注の関係は終わりを告げ、顧客の事業課題にコミットし、変革を実装レベルで支える「伴走者」への進化が問われている。
JBSは東証プライム上場企業としてTOPIX100の72%との取引実績(※JBS調べ)を持ち、強固な顧客基盤をベースとしながらも自社を「まだまだ成長させていくフェーズ」と捉え、ベンチャー企業のようなスピード感と小回り感を持ち続けている。このアグレッシブな環境は、テクノロジーで社会を変えたいと願う若い世代やプロフェッショナルにとっても、かけがえのない成長フィールドとなっている。
「これからのIT人材に求められるのは、単にプログラミングができることではありません。先端のテクノロジーを誰よりも早く自ら試して使いこなし、その実践知を持ってお客様の業務や組織そのものを変えていく力です。JBSには本気で成長したいと思う人に対して、先進的なテクノロジーを存分に使える環境があります。社員一人ひとりがテクノロジーを通じて成長し、その実践知を最大限に発揮しながら日本を代表するような大手企業のお客様の変革に携わり、社会の発展につなげていってほしいと思っています」
最後に、牧田氏は日本企業の未来と、JBSが果たすべき社会的役割について力強く結んだ。
「多くの日本企業がデジタル投資を最優先課題に掲げながらも、成果創出に悩んでいます。テクノロジーが急速に進化する中で、その価値を現場の業務に落とし込み、社員の働き方を変えていく。
