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なぜ機関投資家は"長く"金(ゴールド)を持つのか? 長期保有という視点で考える「金投資」の価値【データでわかる金投資②】

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金は「長期投資」に強い
  • ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 制作:東洋経済ブランドスタジオ
金価格は過去最高値圏で推移している。価格上昇が続く中で、「今から投資しても遅いのではないか」と感じる投資家も少なくないだろう。一方で、長期資産形成の観点から金を保有し続ける機関投資家や中央銀行も多い。そこで、金の長期的な価値や保有する意味、長期投資で活用したいETF(上場投資信託)について、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの新原謙介氏、アーロン・チャン氏に聞いた。

長期保有という視点で「金」を見る

ここ数年、金価格の上昇が続いている。足元では調整も見られるが、ニュースなどで過去最高値更新という言葉を目にし、「ここまで上がった今から投資しても遅いのではないか、もっと早く買っておけばよかった」と感じていた投資家も少なくないだろう。一方で調整局面を目にすると、「もう上昇しないのではないか、もっと下がるのではないか」という不安も生まれる。

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの取締役副社長 最高投資責任者の新原謙介氏も、こうした心理は自然なものだと話す。しかし、その一方で投資判断の軸を短期的な価格変動に置くべきではないと指摘する。

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 取締役副社長 最高投資責任者 新原 謙介

「短期的な価格の動きを予測することは非常に難しいと思います。来月上がるのか下がるのか、半年後にどうなっているのかは誰にもわかりません」

そもそも金は、短期的な値上がり益を狙うためだけの資産ではない。新原氏は、資産形成を目的とする投資家が見るべきなのは日々の価格変動ではなく、より長い時間軸でのトレンドだと説明する。

背景にあるのは金と通貨の性質の違いだ。世界の通貨は経済成長や財政政策に応じて供給量が増えていく。一方で、金は採掘によって増えるとはいえ、その量には限りがある。供給量が無制限に増える通貨と、限られた量しか存在しない金では、長期的な価値の動きに違いが生まれる。

「ドルも円もユーロも供給量は増えていきます。しかし金は同じようには増えません。そのため長い目で見れば、通貨の信用を裏付ける役割を担う金の価値は上昇していく方向に動きやすいと考えています」

もちろん、価格が一本調子で上昇するわけではない。景気や金利、為替、市場心理などさまざまな要因によって、短期的には調整局面も訪れる。それでも新原氏は、そうした変動に過度に振り回される必要はないと話す。「短期的には上がることもあれば下がることもあります。ただ、長期で保有するという前提であれば、タイミングをそれほど気にする必要はないと思います」。

例えば積み立て投資という手法も有効だ。価格が高いときも安いときも継続して買い続けることで、購入価格を平準化しながら長期的な成長を取り込むことができる。

「金投資で大切なのは、今が天井かどうかを考え続けることではありません。長期的な視点で保有を続けることです」と新原氏は語る。

投資家にとって本当に問われるべきなのは、「今買うべきか」という短期的な判断ではない。長期の資産形成を考えたときに、金をポートフォリオの一部として持つ価値があるのかどうか。その視点で考えることが、金投資の第一歩になるだろう。

なぜ配当がなくても保有され続けるのか

投資商品を選ぶ際、多くの投資家が重視するのが配当や利息といったインカム収入だろう。株式には配当があり、債券には利息がある。一方、金は保有しているだけで定期的な収入を生み出すわけではない。そのため、「配当も利息もない資産を持つ意味があるのか」と疑問を持つ人も少なくない。

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント ゴールド・ストラテジストのアーロン・チャン氏は、そもそも金を株式や債券と同じ尺度で評価すること自体が適切ではないと指摘する。

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント ゴールド・ストラテジスト アーロン・チャン

「金はインカムを得るための資産ではありません。株式や債券とは異なる役割を持つ資産として考える必要があります」

実際、近年は世界的なインフレの進行によって、資産の「名目価値」ではなく「実質価値」が問われる場面が増えている。預金残高が変わらなくても、物価が上昇すれば買えるものは少なくなる。長期投資において重要なのは、お金の額面ではなく購買力を維持できるかどうかだ。

「過去のデータを見ると、金はインフレ率を上回るリターンを提供してきた傾向があります。特に高インフレ局面では、その特徴がより強く表れる傾向があります」(チャン氏)

利息を受け取れる資産は、一見すると魅力的に見える。しかし、物価上昇が続く環境では、その収入が固定されていることで実質的な価値が低下する可能性がある。金は配当や利息を生まない代わりに、インフレによる価値の目減りに備える役割が期待されている。

こうした考え方は個人投資家だけのものではない。世界の中央銀行や機関投資家も、収益獲得だけを目的に金を保有しているわけではない。市場環境が大きく変化したときにも資産価値を維持する手段として位置づけているのである。

「中央銀行による購入が続いている背景にも、長期的な価値保全という考え方があります。収益を得るためというより、資産を守るための保有という側面が大きいと思います」(チャン氏)

長期の資産形成では、リターンを追求する資産だけでなく、資産全体を支える役割を担う資産も必要になる。金は配当を生まない。しかし、それは欠点というよりも、そもそも担っている役割が異なるからだ。

「配当や利息の有無だけで判断するのではなく、ポートフォリオ全体の中でどのような役割を果たすのかという視点で考えることが重要だと思います」(チャン氏)

資産を増やすことだけでなく、守ることもまた長期投資の重要なテーマである。金が長年にわたり資産保全の手段として活用されてきた理由は、まさにそこにある。

長期投資なら東証ETFを活用したい

長期投資を前提に金を保有するのであれば、価格そのものだけでなく、どのような手段で保有するかも重要なポイントになる。

その点で機関投資家を含む多くの投資家が活用しているのがETF(上場投資信託)である。現物の金を裏付け資産として保有するETFであれば、金価格への連動を目指しながら株式と同じように売買できる。それでいて、保管や管理の手間がなく、必要なときに売買しやすいことも支持される理由の1つとなっている。

チャン氏は、長期保有では商品選択も重要になると話す。

「長期保有を前提にするなら、投資対象だけでなくコストにも目を向ける必要があります。例えば『SPDR GLDM(スパイダー ゴールド・ミニシェアーズ)』は低コストで長期投資に活用しやすい商品です。世界最大級の金ETFである『SPDR GLD(スパイダー ゴールド・シェア)』とともに、世界中の投資家に利用されています」

長期投資ではわずかなコスト差でも積み重なれば無視できない水準になる。そのため機関投資家は価格動向だけでなく、流動性や運用コストまで含めて投資対象を選択している。

新原氏は、長期資産形成の観点からも国内ETFの活用価値は大きいとみている。

「最近では、金に投資する投資信託も人気です。金投資信託の多くはETFを組み入れて運用しているため、ETFを直接購入できるのであれば、コスト面ではETFが有利になるケースが多いです」

近年はNISA制度の普及によって、長期・積み立て・分散投資という考え方も広く浸透してきた。株式投資を中心に資産形成を進めている投資家も多いが、将来にわたって資産を守りながら育てるという視点に立てば、分散先の選択も重要になる。

「日本の投資家であれば、東証上場の金ETF『ステート・ストリート・スパイダー ゴールド ETF(為替ヘッジなし/為替ヘッジあり)』は有力な選択肢になると思います。円建てで投資でき、NISAの成長投資枠も活用できます」(新原氏)

金投資の本質は短期的な値上がり益を追いかけることではない。長期にわたって保有し続けられる仕組みを選び、資産全体の安定性を高めることにある。

「まずは少額からでも保有して慣れ親しむことが大切だと思います。長期で保有することで、金の役割も実感しやすくなるはずです」と新原氏はアドバイスする。

現物の金に裏付けられたETFは、その第一歩として有力な選択肢といえるだろう。
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