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国内唯一のガラス製中びん工場で続く変わらないものづくり 象印の原点ガラスマホービンを未来へ継承する

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海外でも愛用される、象印のガラスマホービン
海外でも愛用される、象印のガラスマホービン
  • 象印マホービン 制作:東洋経済ブランドスタジオ
「象印マホービン」という社名が示す通り、マホービンは、象印マホービン(以下、象印)が1918年の創業以来作り続けている、まさに企業を象徴する製品だ。新素材のステンレス製が主流になってからも、すべてのパーツを国内で生産する「オール国産」で、ガラスマホービンを作り続けてきた。いまや象印グループの福町工場が、マホービンのパーツであるガラス製中びんを製造する国内唯一の拠点となっている。福町工場の生産・開発メンバーに、1世紀以上にわたって継承してきた「変わらないものづくり」について聞いた。

ガラスマホービンを作り続ける国内唯一の生産拠点

大阪府にある福町工場は、象印商品の製造を担うグループ会社・象印ファクトリー・ジャパンの中で、ガラスマホービンに特化した生産拠点だ。「今でこそ多種多様に広がっている象印の製品・サービスですが、すべてはこのガラスマホービンから始まりました」と、福町工場の丸山 純氏は語る。

象印ファクトリー・ジャパン 福町工場 丸山 純

マホービンは、外びんの中に内びんを入れて二重にし、そのすき間を真空断熱構造にすることで、高い保温性を実現している。この保温に欠かせないガラス製の中びんを製造することから象印は事業をスタート。その後、中びんに留まらず、マホービンの完成品の製造を手がけるようになっていった。「そんな事業の出発点となった製品を、今もこの手で作り続けていることが、私たちの誇りです」

しかし時代とともに、国内でガラス製中びんを製造する工場は、減少の一途をたどってきた。それでも同社が自社生産を続けているのは、「求めてくださるお客さまがいるから」だと丸山氏。「国内で唯一となった今、福町工場は、日本製ガラスマホービンの歴史と未来を担う貴重な財産になっていると自負しています」

「象印製」に対する信頼に応える「品質」を追求

現在、ステンレスマホービンが国内市場の大半を占めている中にあって、一体ガラスマホービンは、どのような人に届けられているのか?

実はそのニーズの大半は、海外にある。福町工場で作られているガラスマホービンの約7割が、海外で販売されているのだ。

そもそも創業当初、日本では高級品だったマホービンは、主に輸出用として作られていた。それから時を経て、マホービンがすっかり身近な存在になり、ステンレス製が主流になった今でも、「日本製のガラスマホービン」を待ち望む声は、海を越えて象印に届き続けている。とりわけ香りや風味が重視されるコーヒーを飲む文化が根づいている中東や、口に入れるものの安全性に厳しい欧米などで、ガラスマホービンは根強い人気を誇る。

象印は、各国のニーズに合わせ、オリエンタルな柄のマホービンや、欧州デザイナーとのコラボレーション商品なども開発してきた。「それでも最も好評を得ているのは、やはり日本製であることが一目でわかるジャパニーズ・デザイン、つまり『和柄』です」と、設計開発担当の小林 尚史氏は明かす。

象印マホービン 設計開発担当 小林 尚史

デザインへのこだわりはもちろんだが、同社が何より大切にしているのは、「日本製」あるいは「象印製」に対する消費者の信頼に応える「品質」だ。同社が追求する「品質」は、保温・保冷の性能や丈夫さに留まらない。消費者目線での使い心地や使用する素材の安全性についても、時に日本を上回る厳しい海外の基準に対応するため、生産現場ではさまざまな努力を重ねてきた。2019年に開発したユーロデザインの商品では、スタイリッシュなパッケージに、あえて大きく「Vacuum liner made of Japan premium glass」「医療グレードのガラスを使用」と記載した。これは、「日本製ガラスマホービンを中びんから作る唯一の企業として、お客様の期待に応える品質を保ち続ける」という、自信と覚悟の表明だった。

海外で人気の“和柄”(写真左)、ユーロデザインの商品のパッケージ

生産設備・作り手の継承に注力

福町工場では、半世紀以上前の機械が今も現役でフル稼働し、象印独自の高い品質を支えている。そうした歴史ある設備を使い続けるには、日々の細かな気配りが欠かせない。ガラスマホービンの国内生産が減少する中で、製造機械の新設も難しくなっており、工場にずらりと並んだ製造機械のうち、たった1つの部品、たった1本のネジが壊れても、それが廃盤になっていたら、すぐに交換できない可能性もある。ネジ1本で、生産ライン全体が止まってしまうこともあり得るのだ。

それを未然に防ぐために、日頃から機械の保守点検を徹底し、わずかな異常も見逃さないよう細かく動作を確認。故障などのトラブルが起こる前に対処できるようメンテナンスを行っている。「どうしても直す必要がある場合は、象印の別工場にいる技術者や協力会社に修理を依頼し、時には部品の復元を依頼することもあります」(丸山氏)。こうして多くの人の手を借りながら、貴重な生産ラインを守り続けている。

しかしどれほど機械や設備を大切にしても、それを扱う人がいなければ、ものづくりを未来につなげることはできない。そのため福町工場では、生産現場を担う技術者の育成にも力を入れている。

「内びん作りで特に難しいのが、ガラスを溶接する際の火力の調節です。ガラスの溶け具合は、その日の温度や湿度によって微妙に変わるため、機械任せにはできない。技術者の熟達した感覚や判断力が問われる場面も少なくありません」。そうした熟練の技を一朝一夕に身につけることは不可能だ。そのためベテランの技術者が若手に丁寧に教え、技術の継承に努めている。「一つひとつの仕事にやりがいを感じ、『オンリーワンの商品を作る』喜びを知ってもらうことで、次世代にバトンを託せたらと考えています」と期待を込めた。

時代を超えるガラスマホービンと象印のものづくり

創業から100年以上を経た現代、ガラスマホービンは、かつてのような高価な商品ではなくなった。今では、ステンレスマホービンと共に店頭に並び、消費者の選択肢を広げる一つとなっている。

しかし時代が変わっても、ものづくりに注ぐ同社のこだわり・情熱に変わりはない。「多数派ではなくても、『ガラスが良い』と選んでくださるお客様がいる限り、満足していただける商品を提供し続けたい」と、丸山・小林両氏。「お客さまの信頼に応える」という象印のポリシーが、二人の心にもしっかり根付いている。いつまでも温かく、いつまでも冷たい。そんな「魔法」のようなガラスマホービンと、象印のものづくりに対する信念を、福町工場はこれからも継承していく。

象印の想いを綴る「ほら、ここが象印。」はこちら