しかし、現実にはこうした「固定残業代制」を悪用し労働者を定額で「使い放題」する企業は多い。つまり一定の「手当」さえ払えば何十時間、何百時間残業しようとも、追加で残業代を払わない、というやり方だ。
会社がわざわざこのような労務管理をとる理由は明白で、ひとつが見かけの給与高くみせ、入社希望者を増やすことだ。もうひとつが、残業代の支払いを曖昧にして、あたかも「合法的に」残業代を払わずに長時間労働に追い込もうとする意図である。
しかし繰り返すように法律上は、その給与には残業時間を含み込まれているので、実際の時間あたりの給与はかなり低く抑えられているし、残業代の支払いも、規定の残業時間を超えた分は払わなければいけない。
つまり、固定残業代制とは、始めから求職者を「騙すため」に採用されている制度なのだ。だからこそ固定残業代制はもっとも典型的な「求人サギ」と言われている。
ちなみに、固定残業代制の手当は「残業手当」や「固定残業代」という名前以外にも、「現場手当」「OJT手当」「営業手当」など無数にある。そのため、とにかく求人票に、よくわからない「手当」が書いてあったら注意が必要だ。
「手当」すら求人票に書かない企業の騙しの手口
また、最近ではそうした「◯○手当」とすら書かない求人も増えている。
ある不動産会社の事例をあげよう。
もはや、給与の実に半分が固定残業代となっている異常な事態だ。しかも求人の段階ではただ単に「基本給30万円」とあるだけで、残業に関する手当と一切書かない。明らかな「詐欺」である。