一方で、このような求人票はどうだろうか。

まず、休日や休暇についての情報がなく、肝心の給与と勤務時間についても、不明な点が多い。店舗の開店時間や閉店時間が店舗によって異なるらしいが、シフト制のもとで実際に1日何時間働くかわからないし、「残業手当」なるものの説明も不十分である。
このような求人票では自分の労働条件がほとんどわからない。実は、それどころか、この求人票には典型的な「求人サギ」の手口が潜んでいるのだ。
■手口1 給与の水増し ――「営業手当」「残業手当」「勤務手当」等々(固定残業代)
給与欄の「注意書き」と「手当」に注意
この「よくわからない求人」の例について、まずは給与の欄に着目しよう。大卒で23万円と高めに設定されているが、額だけ見て安心してはいけない。注意書きもよく見る必要がある。
注意書きには「30時間分の残業手当を含む」とある。ということは、月30時間までの残業に対して払われる残業代は、この23万円の中に入っているということだ。このように一定の残業代をあらかじめ給与に含み込ませた給与体系を「固定残業代制」という。
ここで疑問が生じる。23万円のうち、いったい何円がその「残業手当」として払われているのか? 定時の基本給は何円なのか?
この求人票にはそれが明記されておらず、まったくわからない。
実は、このような求人は違法である。なぜなら会社が残業代を含んだ給与支払いをするためには、その給与額のうち残業代が何時間分で何円なのか明らかにしなければならないからだ。また、その場合であっても、規定の残業時間(今回の場合月30時間)を超える残業が行われたときには、超過分の残業代が別途払われなければならない。
つまり、上記の求人の内容のままだと、会社は法律上、残業時間全時間分の残業代を23万円とは別に本来は支払わなければならない。