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GO「移動の再定義」で描く10年後の社会の景色 IPOで目指す「日本を動かす、社会インフラへ。」

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GO 代表取締役社長 中島宏氏
  • GO 制作:東洋経済ブランドスタジオ
6月16日に東京証券取引所グロース市場に上場したGO。日本初のタクシーアプリを生み出し、3500万ダウンロード・47都道府県展開で約5億回の移動を支えてきたが、IPO(新規株式公開)の先にどのような未来を描いているのか。代表取締役社長の中島宏氏に、新ビジョン「日本を動かす、社会インフラへ。」に込めた思いと、自動運転の社会実装を含めた今後の戦略を聞いた。

上場は「企業としての透明性」を維持し続けるための選択

――2026年6月16日に東京証券取引所へ上場されました。このタイミングでIPOに踏み切った理由をお聞かせください。

GOは、かねてより「公共性の高い企業としての透明性確保」を目指してきました。主力事業であるタクシーアプリが、公共交通であるタクシー産業に立脚しているからです。数多くのタクシー利用者および全国のタクシー事業者・乗務員の皆様をつなぐプラットフォームを展開しているため、公共性の高さにはこだわってきました。

一方で、我々自身の出自もあり、「特定のタクシー会社を優遇しているのではないか」など運営の透明性や公平性にかなり厳しい視線が注がれていることは強く自覚しています。幅広いステークホルダーと深く関わっていくうえで、パブリックな存在であることを客観的に証明するため、多数の厳しい審査プロセスを経て上場企業となるという選択肢を早い段階から意識してきた経緯があります。

遅ればせながらこのタイミングでの申請となったのは、2025年5月期にようやく黒字化というマイルストーンを達成できたからです。しっかりと利益を出し、サステナブルな企業であることをお示しできる状況になることが、上場審査を開始する資格の一つだと捉え取り組んだ結果となります。

上場審査そのものは、細かな契約書の確認だけでなく、実際の取引が全てチェックされ、さらにそれぞれの実態の確認やヒアリングを一つひとつ受けるなど、我々の想像以上に厳しいものでした。まさに我々の期待した、透明性の高い企業と認識されるために不可欠なプロセスだったと受け止めています。上場後もこのプロセスが回り続けることも踏まえ、望んだ以上の効果を感じています。

新たなタクシー文化と就業環境の向上を実現

GO 代表取締役社長 中島宏

――2020年9月にタクシー配車アプリ「GO」をリリースしてから6年弱です。これまでの取り組みをどのように見ていますか。

改めて振り返ると、日本のタクシー体験は、この6年弱で劇的に変わりました。顕著なのが決済方法と広告掲示です。今や、大多数のタクシーでクレジットカードや各種電子マネーによるキャッシュレス決済ができるようになり、車内から紙のチラシはなくなりました。

移動体である車の中で、日本独特の多種多様なキャッシュレス決済サービスを提供するのは決して簡単ではありませんでした。どのような環境でも、どんな種類の決済サービスでも確実に決済を完了させるには、高度なテクノロジーを組み合わせるだけでなく、安価に普及させる必要があったからです。この難題に対して、GOのエンジニアは「決済機と広告デバイスの融合」という、世界に類を見ない日本独自の新しい形を創出し、業界へ着実に実装することで解決してきました。

また、「以前は知らない土地だとタクシー会社の電話番号を調べるのも大変で、呼んでも時間がかかったりしたけど、タクシーアプリのおかげでそういうことがなくなった」という声もよくいただくようになりました。タクシーをアプリで呼ぶという文化を定着させ、移動体験を快適で利便性の高いものへと変えることに寄与できたのではないかと思っています。

――確かに、タクシーアプリが登場する前はタクシー会社に電話をかけるか、駅などのタクシー乗り場で待つか、路上で空車を止める必要がありました。かなり利便性が上がっています。全国47都道府県をカバー(※1)したのが大きいのでしょうか。
※1 タクシーアプリ「GO」は全国47都道府県すべてをカバー。2026年6月期の実車数(タクシーアプリ「GO」を通じて配車注文したタクシーに乗車した回数)は9631万実車で前年同期比25%増

都道府県への展開実現もありますが、その前提として大きかったのは、全国のタクシー事業者の皆様からの理解と深いパートナーシップ(※2)の実現です。新しく生み出した車載器などのITソリューションは、導入当初トラブル続きの時期もありました。しかし、趣旨をご理解いただいたタクシー事業者や乗務員の皆様に、辛抱強く一緒に磨き込みに並走いただいたことで、利便性を向上させることができました。
※2 GOのパートナー事業者は1500社以上

その結果、リアルタイムの需給マッチング率が高まり、タクシー事業者の営業効率向上につながりました。従来と比べ、利用者を乗せていない空車の走行時間割合は大幅に減っています。同時に運賃の引き上げが行われたこともあって、歩合制の給与体系を取っていることが多いタクシー乗務員の皆様の平均所得は着実に上がっています。

労働力不足である日本の現状を踏まえると、働き手の所得を引き上げるのは非常に重要です。しかし、営業効率を上げずに所得単価だけ引き上げようとするとひずみが生じます。タクシー産業では、デジタル化を進めて産業構造そのものを効率化することを同時に行ったことで、ひずみのない所得向上が実現しています。近年、タクシー産業で働く20代、30代が大きく増加し、タクシー乗務員が魅力的な職業になったのも、こうした変化を起こせたことが背景にあると思っています。

高齢化社会の日本において、デジタル化をテコに地域事情に即した形で産業全体の労働者年齢構成の若返りを実現した事実は、世界の機関投資家から非常に驚かれますし、高く評価を受けている理由の1つだと考えています。

新ビジョン「日本を動かす、社会インフラへ。」に込めた思い

――上場とともに、新ビジョン「日本を動かす、社会インフラへ。」を公開されました。このタイミングで新たなビジョンを策定した理由は何でしょうか。

これまでGOは、「モビリティから、技術を前へ、産業を前へ、ライフスタイルを前へと進める。」というビジョンを掲げてきました。決済も現金メインで需給マッチングも不十分だった状況から、現場で活用いただける技術を搭載してタクシー体験を改善しようという思いがあったからです。

そうした思いを持って取り組み続けた結果、「GO」をリリースしてから6年弱で、それらの利便性はすでに当たり前のものとなりつつあります。そのため、この上場という機を捉えてビジョンをアップデートすることで、我々自身が改めて社会課題を解決する新たな推進力を生むきっかけにできるのではないかと考えました。

――「日本を動かす、社会インフラへ。」にはどのような思いを込めたのですか。

歴史を振り返ると、第1次産業革命も第2次のそれも、「移動」「通信」「動力」という3つの領域で同時に革新が起こっていたことが、歴史的な変化の原動力になったとも言われています。現在の社会も、電気自動車(EV)や自動運転という「移動」、AIの発展という「通信」、再生可能エネルギーの実装という「動力」と、同じく3領域で同時多発的にイノベーションが起こっています。この状況を踏まえると、数十年後の歴史の教科書に「あの頃は第3次産業革命でした」と書かれる可能性は十分にあると思っています。

この変革期に、GOができることは何かと考えたとき、私が常に参考としているのが昭和初期の産業発展のプロセスです。鉄道というモビリティを起点として不動産産業、流通小売産業、果てはエンターテインメント産業にまで事業を展開してきた例もあります。時代の要請に向き合い、社会課題を次々に解決する先人たちの挑戦により、日本は豊かになっていきました。僭越ながら我々も、タクシー産業というモビリティ領域を起点としていますので、現代の社会課題に向き合って事業を広げることで、世の中に貢献していけるのではないかと強い使命感を抱いています。

人と物が動けば動くほど、その国のGDPが引き上がるという研究結果があります。移動に伴う物理的な制約や不安を取り除き、誰もが自由に、軽やかに社会とつながっていられる「当たり前の幸せ」を満たすための土台として、モビリティを起点としたインフラを整備することは、日本の社会課題を解決し、GDP向上に貢献する責任を果たすことにつながります。GOがその役割を担うという約束を明文化したのが、新ビジョン「日本を動かす、社会インフラへ。」です。

自動運転の実装では「人との共生」を重視

――具体的にはどのような社会課題の解決を目指しているのでしょうか。

あらゆる社会課題の解決につながるインフラを整備するのが、GOの役割だと考えています。その中でも、喫緊で取り組むべきは「脱炭素」と「労働力不足」です。

モビリティは大量の温室効果ガスを排出している産業の1つですから、「脱炭素」の取り組みは重要です。EVタクシーの普及や充電インフラの提供、エネルギーマネジメントシステムの構築などの事業に取り組んでいます。

「労働力不足」の解消は、今後の人口減少を考えると効率化だけでは困難で、自動運転の社会実装が必要です。ただし、それによって人の労働力が不要になるわけではありません。例えばアメリカでは、自動運転タクシーが利用後にドアを開けっ放しのまま立ち往生し、交通の妨げになるトラブルが起きています。こうした突発的な事態に乗務員が駆けつける、自動運転タクシーとヒューマンドライバーの相互補完の体制が求められます。

また、タクシーには激しい需要と供給の波がありますので、車両の数をピークタイムに合わせると乗務員1人当たりの所得が下がります。所得を高い水準で維持しつつ、車両不足を防ぐには、供給不足時に自動運転タクシーを投入するのが有効であると考えています。破壊的に自動運転へ置き換えるのではなく、テクノロジーを活用して自動運転タクシーとヒューマンドライバーの共生を進めるべきだという考えです。

自動運転というと米国の取り組みをイメージされることが多いですが、交通事情は国によってまったく異なります。日本の交通事情に合わせて役割分担を調整し、誰もが納得のいく形で社会実装を進めていくのが、社会インフラを担う企業としての腕の見せどころだと思いますし、自動運転と人の「共生」戦略をリードしていくのも、GOの果たすべき役割だと考えています。

――足元での“打ち手”についてもお聞かせください。どのような取り組みに力を入れているのでしょうか。

2024年に開始した相乗りサービス「GOエコノミー」は、繁閑の波を吸収しつつ営業効率を高める取り組みです。多様な価格帯で、タクシーの利用者層を広げ、利用機会の総量を増やすことも目指しています。

都市向けのサービスを想定していましたが、過疎地域を抱える自治体から多くの問い合わせをいただいています。これまで運行してきたコミュニティーバスなどではコスト効率が悪く、税金を有効利用する観点でも「GOエコノミー」に関心が集まっていて、地方創生にも貢献できる取り組みだと考えています。

自治体や公共団体と連携した公共交通の補完事例は多数あり、ニセコエリアや軽井沢など観光地の交通課題への対応や、妊産婦向け移動支援、見守り機能との連携も実施しています。GOを通じて走る車両が増えれば増えるほど、誰もが安心して暮らせる社会に近づく仕組みを今後も構築していきます。

上場という「第2ステージ」で幅広い社会課題に立ち向かう

――足元では「ライドシェア」も注目されるテーマです。これも新ビジョンと繋がる取り組みの一つなのでしょうか。

その通りです。「日本版ライドシェア」「公共ライドシェア」の支援を通じて、公共交通が十分に機能していない交通空白の解消に取り組んでいます。世界を見渡すと、ライドシェアのあり方は国によってまったく違います。日本でも、特有の交通事情と労働市場にマッチした形で規制緩和がなされていると感じますので、タクシー事業者の皆様を軸とした信頼性の高い運行体制と、GOのプラットフォームを組み合わせて、移動課題への現実的な解決策を提供していきます。

なお、現在日本全体でライドシェアドライバーとして登録されているのは約1万人ですが、採用応募者はその数倍います。逆に言えば、数万人が自分の車でスポットワークすることに興味を持っているということです。すでに物流業界とのワーカーシェアリングが始まっていますが、タクシーと物流という2つの産業領域での共創には、労働力不足解消に向けた可能性を感じています。

我々が新ビジョンで成し遂げたいのは、タクシーアプリの枠を超え、移動や物流、さらにはエネルギーなど、あらゆる周辺産業の課題を連動させて解決する社会インフラとしての共通基盤を整備することです。足元の自動運転や日本版ライドシェア、物流連携といった一つひとつの取り組みは、「持続可能な社会インフラ」という大きなパズルのピースとして、一本の線で繋がっています。

――東洋経済の読者にメッセージをお願いします。

振り返れば、タクシーアプリ「GO」をリリースした2020年からしばらくは、年間100億円以上の赤字を出しながら、リスクを取って産業構造の効率化に取り組んできました。黒字化を達成し、公共性の高い企業として社会課題の解決にチャレンジさせていただけるようになったのは、全国のタクシー事業者および乗務員の皆様、そしてユーザーの皆様の支えがあったからだと思っています。

上場によって、より柔軟にダイナミックな事業展開がしやすい環境を整えることができましたが、実感しているのは「上場はゴールではなく、第2のステージへの通過点」ということです。私たちがこれまでも向き合ってきた、深刻な労働力不足やサステナビリティといった日本の社会課題に対し、今後より一層の覚悟を持って真正面から解決に挑んでいきます。

既存のタクシー産業やユーザーの皆様に対する責任を果たしつつ、多様なステークホルダーの皆様との共創を通じ、「日本を動かす、社会インフラへ。」という新ビジョンを、必ず実効性のある形で実現していきます。これからも続くGOの挑戦に、ぜひご期待ください。
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