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UACJとKPMGが挑む、生成AI導入と業務変革。現場で価値を発揮する「生成AI活用」の秘訣とは

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UACJとKPMGのみなさん
製造業を変革する生成AI活用について、UACJとKPMGのキーパーソンが語り合った
  • KPMGコンサルティング 制作:東洋経済ブランドスタジオ
業務効率化のために生成AIを導入したが、現場での活用が進まないという課題に直面する企業は少なくない。アルミニウムの生産において世界トップクラスの実績を誇る総合メーカーであるUACJもまた例外ではなかった。同社はKPMGコンサルティングとともに、業務プロセスの見直しから生成AIの定着化までを一体で推進する変革プロジェクトに取り組んでいる。両者のキーパーソンがその実践から見えてきた「成果」と「壁」、そしてDX成功の条件をひもとく。

生成AIをバックオフィスに導入した理由

――今回の生成AI活用プロジェクトは、UACJの経営戦略上どのような位置づけなのでしょうか

神田 UACJでは2020年に策定した長期経営ビジョン「UACJ VISION 2030」の中で、データとデジタル技術の活用を通じた業務変革により、競争優位性をさらに強化することを重点課題の1つとして掲げています。

製造業にとって最優先すべきは安全です。労働人口の減少や働き方の変化も踏まえ、長期的には人が直接製造ラインに入らない自動化・無人化を目指しています。 一方で、今回焦点を当てたのはバックオフィスを含む間接部門です。2025年に実施した社内ヒアリングの結果、製造現場と比べて間接部門は生産性向上への改善マインドが根付いておらず、DXが遅れていることがわかりました。また、離職への懸念や生成AIの活用が限定的であることへの危機感も強まっていました。

UACJ
経営戦略本部 副本部長
神田 知之

野中 DXについては、分散するデータを接続するところから取り組み、基盤は整いつつあります。現在は競争力強化という目標に向けて、業務プロセスにどのように適用するかという実装フェーズに移行しています。生成AIの導入も、いきなり全社に広げるのではなく、まずは「手触り」を確認したかった。実際の業務にどのように使えるのか、財務、人事、設備の3部門を対象にユースケースを開発しながら実験的に進めていこうと考えました。

UACJ
ビジネスプロセスDX推進本部長
野中 道央

AIはゴールではなく、手段である

――具体的には、どのような業務から着手したのでしょうか

野中 多忙感が強く、かつ業務上の課題も見えていた8つの業務領域でトライアルを開始しました。例えば設備投資の稟議・決済では、何段階もの社内会議に向けて資料を作り込みます。予算が承認されれば役割を終えてしまう資料に膨大な工数をかけることには現場でも疑問の声があり、生成AIで効率化できないかと考えました。

神田 優秀な人に業務が集中し、その人が抜けたときに業務が滞る事態も起きていたため、KPMGコンサルティング(以下、KPMG)に支援を依頼し、生成AIの活用を含む抜本的な業務改革プロジェクトを立ち上げました。業務全体をエンドツーエンドで自動化したわけではなく、特に手間と時間がかかっている「点」に生成AIを導入しました。

中野 特徴的なのは、単なる生成AI導入プロジェクトではなく、BPR(業務改革)の一環として取り組まれたことです。また、今回対象とした稟議や予算編成は、中間管理職や担当者が非常に大きな負荷を抱える業務なので、そこに時間削減の成果が出れば、組織全体に前向きなモメンタムを生み出せると考えました。今回のプロジェクトでは、まさに「点」で成果を出し、それを一連の業務フローに当たる「線」や売上向上の「面」へと広げるための土台づくりを重視しました。

KPMGコンサルティング
アソシエイトパートナー
中野 裕介

湯浅 どの企業・部門においても、業務の根幹が熟練社員の経験や暗黙知に依存しているケースは少なくありません。日本の人口構成を考えても、暗黙知の形式知化と業務の標準化は喫緊の重要テーマです。ただ、生成AIは魔法のように暗黙知を読み取るわけではありません。必要な情報をどうそろえ、どの業務に適用するかを丁寧に設計する必要があります。そのためにも、現場の方に納得感を持っていただくことは非常に重要だと思います。

KPMGコンサルティング
マネジャー
湯浅 みずき

「使える」のに「使われない」は、なぜ起きるのか

――成果があった一方で、課題も見えてきたそうですね

野中 成果としては、8件のユースケースを開発し、うち7件が実用段階に到達しました。削減時間も平均50%、大きいものでは70~80%という効果が見込めています。

ところが、KPMGにプロンプトを組んでもらうなどツールを使える環境が整っているにもかかわらず、実際には「現場で使われない」という問題が起きています。今、最も悩んでいるところで、KPMGにもヒアリングなど協力していただいています。

なぜ使われないのか。担当者はもともと業務量が多い状況にあるため、「もしうまくいかなかったらどうしよう」という不安があるのだと思います。新しいツールを使えば10の作業時間が5に短縮できるとわかっていても、うまくいかなければ、さらに10のリカバリーが発生するかもしれないと慎重になるのは理解できます。

中野 機能としては動く。成果も見える。けれども現場で使われない。これは生成AI導入において大きな壁です。通常業務で手いっぱいの人に、「これを使えば楽になります」と言っても、試して大丈夫そうだと確証が持てなくては始まりません。

今回は単なるPoC(概念実証)ではなく、本番適用の前提でトライアルを進めました。スピード感をもって進められた一方で、少し急ぎすぎたのかもしれないという反省もあります。PoCに時間をかけていれば、使う人が新しいやり方に慣れるまでの心理面の変化にも丁寧に寄り添えたはずです。生成AIの導入では、ツールの完成度だけでなく、使う人の心理や業務環境まで含めて設計する必要があるのだと改めて感じています。

神田 「忙しさを解消するための仕組みなのに、忙しすぎて試す余裕がない」という矛盾に加えて、バックオフィス部門には製造現場ほど生産性向上を意識するカルチャーが根付いていないという側面もあります。手順書も業務フローも十分でなく、前例踏襲のやり方に慣れているため、変革の最初の歯車を回すのが非常に重い。

ただ、悲観はしていません。一度歯車が回り始めれば、一気に進んで全社展開の道筋が見えてくるはずです。ここを突破できるかどうかが、いちばんの踏ん張りどころだと考えています。

「生成AIの業務実装」を進めるための突破口とは

――突破するためには、何が必要でしょうか

野中 ポイントはいくつかあると考えていますが、重要なのは「失敗を許容するカルチャー」です。うまくいかなかったときに個人の責任にせず、上長が「失敗したら一緒に汗をかくから、まずはやってみよう」と言えるかどうか。そのためには、部門長の理解とサポートが欠かせません。場合によっては、一時的に人をつける判断も必要でしょう。

神田 その意味では、「トップのコミットメント」も重要です。今年度から「ビジネスプロセスDX推進本部」を新設したことも、会社としての意思表示です。経営層だけでなく、本部長や部長クラスが具体的な数字を挙げて方針を示し、生産性向上は業務として取り組まなければいけないというメッセージを発信していく必要がありますね。

中野 単なる「DX推進」でなく、「テクノロジーでビジネスを変革する」というのは、非常に重要なメッセージです。生成AIを使うこと自体を目的にしても、現場は動きません。「この業務にかける時間を半減する」「この慣行を廃止する」「削減した時間を次の改善や高付加価値業務に使う」といった具体的なKPI(重要業績評価指標)があれば、次の段階へ進む大きな強みになると思います。

湯浅 新しい技術に対する不安や抵抗感は、どの組織にもあります。払拭するには、トップダウンの発信に加えて、「使ってみたら業務が楽になった」という成功体験をボトムアップで広げていくことも効果的です。

野中 まさに、各拠点にエバンジェリストを配置しようと考えています。さらに言えば、工数を削減するだけでは意味がなく、生まれた時間をいかに付加価値の高い活動に使うのかもポイントです。よって、部門長には「空いた時間で何をするのか」をあらかじめ準備しておくように伝えています。

点から線、面へ。生産性改善を付加価値向上につなげる

――今後の展望を教えてください

野中 「期待したように使ってもらえない」というと後ろ向きに聞こえるかもしれませんが、課題が見つかったこと自体は成功だと考えています。私自身、最初は生成AIを魔法の杖のように見ていたところがありましたが、実際に使うのは人間です。うまくいくケースもあれば、思うようにいかないケースもある。

理由や突破口を考えられるようになったことに、この半年間の価値があります。今後は、KPMGの知見を活用して他社・他業界の実践知を取り込みながら、「点」から「線」、「線」から「面」へと広げるためのストーリー設計をぜひお力添えいただきたいです。

湯浅 目下取り組んでいる財務や人事といった間接業務は、他社でも共通の課題を抱えている領域です。製造業に限らず幅広い業種の成功事例を積極的に活用し、UACJの取り組みがさらに上の段階へ進むようお役に立てれば幸いです。

中野 ​これまでは早期に効果創出することを優先して、意図的に部分最適な改革をご一緒して参りました。今後は効果の大きさを優先して、より広い業務プロセスを対象に全体最適な改革にシフトする計画です。さらに、効果として創出された時間・工数を糧に付加価値を高めることにチャレンジしていきたいと考えています。

神田 KPMGのみなさんは、当社をよく理解したうえで寄り添っていただいている一方で、「本来はこうあるべきだ」という視点も持ち、壁にぶつかったときもとことん議論できる関係です。これからも一緒に走っていってもらいたいですね。

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