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「ニセコ乱開発」と騒ぐネット民の大誤解 ショベルカーが並ぶ"現場"で本当に起きていたこととは?

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「住民自治」を重視するニセコ町は、前述の「ニセコ町まちづくり基本条例」に基づき、「ニセコ町景観条例」(2004年)を定めている。町民の財産であり誇りでもある、羊蹄山やニセコアンヌプリ、尻別川の自然を守るための条例で、とりわけ開発行為に関して厳しく規制している。

例えば、高さ10メートル超の建築や一定規模以上の土地開発を行なう場合は、町長との事前協議を必要とし、住民説明会の開催や設計図面、完成予想図などの提示が求められる。また、取水量に関しては、建物が建つ面積における年間降雨量の範囲内と定めている。

こうした規制により、実際に建築が止まっている案件が2件ある。いずれも香港資本だという。このうち1件については、住民の同意を得られず、3度の設計変更を行なったがそのまま保留となっている。

ちなみに、香港系の開発企業の破綻で工事が止まり、「ニセコバブルの崩壊」などとニュースで報じられたニセコ町内のリゾートホテル「ラ・プルーム」は、日本国内の投資ファンドが取得し、事業を承継すると、2025年7月10日付の北海道新聞が報じている。こちらは同年9月に工事が再開された。

外国人が先に価値に気づいた

ニセコ町にいると思うことがある。「地方の町が生き残るとはどういうことか」。豪華なリゾート施設を作ることも一つのあり方かもしれない。しかし、ありのままの自然を残し、その自然を壊さないように住民が暮らす町であることも、人々を惹きつける要素ではないか。

今から24年前の2002年、住民自治が醸成しつつあったニセコ町で、小冊子『ニセコ町環境基本計画』が作られた。住民から有志を募集し、手を挙げた8名がその作成を担った。毎週1回、公民館に集まり、ニセコ町に育つ希少な植物や生物、野鳥などの生態系や山や森、河川の状況を60ページ以上にわたってまとめあげている。

「よい環境を子どもたちに残したい」と書かれた手のひらサイズの小冊子には、こんな一文がある。

〈身の回りの大切な環境を守り、心の中に生き続けている美しいニセコを取り戻すため、ひとり一人のできることから始めませんか。あなたにもできることが、この小さな計画書の中にきっとあるはずです〉

『強欲不動産 令和バブルの熱源に迫る』(文春新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ニセコ町の町民たちが30年以上にわたり守ってきた景観が価値となり、今、世界の富裕層の投資や教育移住を呼び込んでいる。バブル崩壊以降、日本人が行かなくなった土地の価値に先に気づいたのは、むしろ外国人だったのだ。

ここに興味深い調査結果がある。ニセコ町の景観条例に対する支払いとしてどれくらい負担する意思があるかを尋ねたものだ。外国人観光客が822円なのに対し、日本人観光客は379円で、ニセコ町の住民は4070円だった(デロイトトーマツ調べ、2024年)。

ここは、ネット上やメディアに書かれているような、「乱開発の現場」でも「外国人に土地を売り渡した売国奴が住む町」でもないのだ。

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