「新たな負担ゼロ」で断熱改修実現した団地の覚悟 横浜市の竹山団地「生活のストレス」をなくす

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移管後も引き続き建物の管理業務を行っていた公社によって建物診断がなされたのですが、診断の結果、多くの不具合が指摘されました。そこで今後の修繕などについて住人主導で計画を立てていくことの必要性を感じた人たちが、理事会の専門委員会として、長期計画検討委員会(以下、検討委員会)を立ち上げたのです。

「建物診断では外壁にひび割れがある、サッシが開きにくくなっている、など多くの指摘がなされました。管理会社は管理・運営の主体を組合に移管した以上、具体的にどうするか、という話はしません。『仕方がない、自分たちで考えるしかないね』と腹をくくって検討を始めた形です」(稲葉さん、以下同)

稲葉壮二さん
断熱改修を含む大規模改修工事の検討を始めた当初から組合の運営に携わる、竹山16-2団地管理組合法人 事務局長の稲葉壮二さん(写真撮影/桑田瑞穂)

第1期の検討委員会は、建て替えを強く主張する人との意見をまとめることができず、検討委員会が解散したこともあったそう。けれども2008年には専門知識や興味のある人を中心に検討委員会を再設置。

費用面などから考えても「現在の建物で大規模修繕を行って長く住み続けることが大切で現実的だ」と一つひとつ具体的な内容を詰めていったのです。

「夏の暑さに耐えられない」「押し入れにカビ」積もる生活のストレス
検討委員会では「どの工事を行い、優先すべきか」の検討を進めるため、住人にアンケートを実施するなどして意見を募集しました。すると多くの人からさまざまな声が挙がったのです。

「『壁の内側の結露が激しい』『押し入れがカビだらけになっている』という話はほとんどの住人から聞かれました。とくに最上階の4階に住む人からは『夏は暑くてたまらない。エアコンを入れても全然効いている感じがしない』と必死な様子での訴えがあって」

エアコンをつける女性
最上階である4階に住む人たちは、とくに夏の暑さに対して「エアコンを入れても全く部屋の温度が下がらない」と困っていたそう*写真はイメージです(写真:YsPhoto/PIXTA)

竹山団地に限らず、全国の古い団地や集合住宅で、建物の老朽化や住人の高齢化とともに問題になっているのが、住宅性能の低さとそれに伴う生活環境の悪化です。

地球温暖化などの影響で夏場の気温は年々上昇しています。断熱性能や気密性能が低い住まいでは、外の熱や湿気を十分に遮ることができず、暑さ、湿気によるカビの発生など、生活にストレスを与える現象が生じたり、住む人の健康を損ねたりすることがあります。

冬場には結露が起きたり、室内の場所によって生じる寒暖差から高齢者がヒートショックを起こすなど、命の危険につながることも指摘されています。

議論と検討を重ねて工事内容を決定

稲葉さんたち検討委員会のメンバーは、竹山団地に住む人の日々の暮らしにおける不快・不調・不安を改善するにはどうしたらいいのか、の答えを求めて専門家を呼んで勉強会を開くことにしました。複数の会社や有識者に話を聞きながら検討を進めていくうちに、「断熱性能」を上げることが快適な生活を送るための最優先課題だと認識します。

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