日本の「すごい文具」が抱える、唯一の欠点 <動画>海外展開のときに「問題」が露呈する?

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斬新なアイデア、高い機能性に、お手ごろな価格。そんな世界に誇れる「日本の文具」はたくさんありますが、夏野剛氏は各社に共通するある問題点を指摘します。

 

皆さん、テープカッターの「直線美」という商品をご存知でしょうか。これはとっても面白い商品ですよ。いわゆる「セロテープ」を作っているニチバンという会社が出しているものです。

世界に誇れる日本の文具。夏野剛氏が指摘する問題点とは?(写真:hiro / PIXTA)

セロテープって、普通のカッターで切ると、切り口がギザギザになるのが常識ですよね。それが、この「直線美」を使うと直線になる。さっそく私も買ってきて、使っておりますが、とても気持ちいいです。

ついでに指紋が付きにくくなるような工夫もほしいな、と思いましたが、それはともかく、ピシッと直線に切れるのはすばらしい。

実は日本の文具業界というのは、世界でも非常に進んでいます。たとえば、針のないホッチキス。これもすごいですよね。「ハリナックス」(コクヨ)と言うのですが、針をなくす代わりに紙に穴を開けて織り込んだり、プレスするような格好で紙を綴じられます。

あるいは、ハサミの「フィットカットカーブ」(プラス)はご存知でしょうか。どの部分でカットしても切りやすいように、ハサミの刃の形をちょっとカーブさせているという商品です。これもすばらしいですね。

ネーミングは、本当にそれで大丈夫?

この記事は週刊『夏野総研』とのコラボレーションでお届けします

ほかにも消せるボールペンとか、過去から今に至るまでいろいろな商品が開発され、本当に日本の文具のレベルの高さは評価されてしかるべきだと思います。このテープカッター「直線美」も、間違いなくそんな商品の一つに入るものでしょう。

ただ、各社に共通する問題がひとつあって、それは「ネーミングは本当にそれで大丈夫ですか?」ということ。「直線美」は漢字なので、海外市場に持っていくときには違う名前にするのでしょう。「ストレートビューティ」とかでしょうか……。なんか、もうちょっと考えたほうがいいような気もしますが。

「ハリナックス」にいたっては、確かに洋風にしていますが、「針」ですからね……。ハサミの「フィットカットカーブ」はまだいいとして、ネーミング大丈夫ですかね、と言いたくなる商品が多いことが、ちょっと心配です。

というのも、グローバル展開をするときにはブランディングとスピード。この2つが極めて大事で、進出するときになって「海外向けにブランディングを練り直そう」とか、そういうことをやっていると、時間がかかってしょうがないのです。

だから日本の文具業界の皆さん、もう最初からグローバライズを意識したネーミングと、グローバライズを意識した商品展開をしてください。そうでないと、商品力がもったいない。少なくとも僕は買いますけど、ぜひ世界に持って行きましょう。日本の文具、がんばれ!

夏野 剛 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授

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なつの・たけし

早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモでiモードの立ち上げに参画。執行役員マルチメディアサービス部長を務め、08年に退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、DLE、GREEの取締役を兼任。経産省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー現任。ダボス会議で知られるWorld Economic Forum の“Global Agenda Council”メンバーでもある。


 

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