自分が生かせるフィールドを見つけるために。
立命館大学
自分の表現で人々が喜び幸せになることに価値がある
「自分が好きなことを仕事にすべき」金山裕樹さんはそう考えている。だから卒業後は就職せずにバンド活動を続けていた。2年ほどインディーズで活動したが、バンドは結局解散。ネット企業に就職し、音楽情報サイトを企画運営する仕事をした。

(2001年 政策科学部卒業)
VASILY 代表取締役CEO
「僕が運営に携わっていた音楽サイトは30万人のユーザーがいました。新しいビジネスの立ち上げも経験し、面白さに気がついて、ビジネスを自分の表現活動にしようと考えるようになりました。その意味でミュージシャンをしていたときとモチベーションは変わっていませんでした」
その頃からネットと音楽を組み合わせた新しいビジネスを自分で立ち上げたいと思うようになった。しかしまだ経験もスキルも不足している。もっと自分を磨かなければ。そう考えて超大手IT企業に転じ、音楽のネット配信ビジネスに携わった。
「しかし、日本は権利関係が複雑すぎて、ネットと音楽を結びつけるビジネスはスピード感が遅すぎると感じました。大手企業ならできても、自分が独立してやるのは難しいと。音楽の次に好きなのは映画なので、ネットを活用してDVDをレンタルする新しい仕組みをつくりました。でもそれはレンタルビジネスの延長線上のモデルで、自分で立ち上げたという感じが希薄でした」
そこで金山さんが次に手掛けたのは、ファッションサイトの立ち上げだった。音楽と映画の次に好きなのがファッションだからだ。これはたちどころに月間400万人ユニークユーザーが利用するサービスになった。これで自信をつけた金山さんは満を持して独立を決意、株式会社VASILYを設立した。だが、ときはリーマンショックの直後。新しいサービスどころではなく、スマートフォンのアプリを受託する仕事でしのいだ。
大学で学んだことが今役に立っている
これが予想外に好調で、次から次へと受注が舞い込む。おかげで忙しすぎて本来考えていたプランをなかなか実現できなかったが、2012年、とうとう念願のサービスをスタートさせることができた。提携するさまざまなECサイトのファッションアイテムをユーザーが自由にコーディネートできるスマートフォンアプリ「iQON」だ。

現在「iQON」のユーザーは200万人以上。AppleとGoogleの両方からベストアプリに選ばれた世界でただ一つのアプリである。
「大学時代にプログラミングの基礎的なことを学んだことが今、とても役立っています」。という金山さんは今、海外でも同様のサービスを始めることを考えている。ビッグデータを活用した新しい仕掛けも検討中だ。
「自分の表現で人々が幸せになることに価値がある。儲けることが目的ではありません。貯金なんて大嫌い。人の価値は貯めたお金の額ではなく、使った額で決まるのです」
服装はいつもカジュアル。スーツは1着も持っていない。自由で、アグレッシブで、かなりとがった新進気鋭のベンチャー経営者が登場した。