年々増え続ける戸数 今後も強い需要あり
近年、土地活用を考えるオーナーの間に「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)という選択肢が広がり始めている。入居対象となる高齢者が今後増加し続けるという市場観測もさることながら、建築時の税優遇や補助金も土地オーナーの目には魅力的に映っているようだ。
ではまず、サ高住の内容を確認しておきたい。ポイントは、施設ではなく住居だということ。そのため入居時に高額な一時金は必要ない。高齢者単身・夫婦世帯が安心して居住できるように、一定の広さやバリアフリー構造などを備え、介護サービス事業者等による見守りサービスが付帯していることが要件となる。これらを満たした物件を自治体に登録することで、家賃やサービスなどサ高住に関する情報が開示されるため、高齢者は自らのニーズに合った住まいの選択が可能になる。
「高齢者住まい法」の改正によって2011年10月に開始された制度だが、開始からつねに右肩上がりで戸数は伸び続け、現在の登録戸数は17万9181戸(15年5月現在)。高齢者住宅財団の髙橋紘士理事長によれば、「政府が打ち出した住生活基本計画では、20年までに高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を3~5%にまで高めるとしており、今後も強い需要に合わせて増加傾向が続く」という。
補助、税制、融資で建設をバックアップ
この傾向は、政府がサ高住の供給を促進するために補助金、優遇税制、有利な融資を用意していることが大きな理由の一つだ。
事実、この補助スキームは、プロの目から見ても「土地活用を検討する方たちにはとても魅力的」だと言う。新宿総合会計事務所の副所長の杉江延雄税理士が解説する。
「補助金は年度や自治体によって補助金額が異なりますが、たとえば高齢者が多い東京都で15年度に建てる場合、国と都からそれぞれ建設費の10分の1、改修費の3分の1(ともに1戸につき上限100万円)の補助金が支給されます。さらに地域密着型サービス事業所併設加算や居住者及び地域住民の共用リビング併設加算などで50万円/戸が上乗せされ、合計で最大250万円/戸の補助が得られます。この補助は、通常のマンション・アパートにはもちろんありません」

税制に関しても、固定資産税、所得税・法人税、不動産取得税に軽減措置がある。さらに、サ高住の建設にあたり資金を借り入れる場合は、住宅金融支援機構に問い合わせることをオススメしたい。同機構は、「サ高住の建設資金」融資として特別枠を設け、これが民間金融機関よりも有利な金利設定になっている場合が多いからだ。これらを加味すれば、サ高住は土地活用の選択肢としての有力候補になり得るだろう。
その一方で、慎重に進めるべきポイントもある。
「補助金が出るわけですから、クリアすべき要件はそれなりに厳しいですし、サービスを提供する事業者をどうするのかといった問題もあります。つまり、誰と一緒にサ高住を作り、運営するのかが重要になります。長期にわたって運営していくものですから」(杉江税理士)
副所長・税理士
杉江 延雄 氏
建てたはいいけど入居者が増えない、サービス事業者がずさんで苦情だらけ、ということでは目も当てられない。実は、サ高住は登録戸数の増加ペースに同調するように問題も顕在化し始めているのだという。髙橋理事長が語る。
「本来はケアマネジャーと相談して在宅医療・在宅介護サービスを自由に選べるはずなのに、見守りサービスを行う事業者が特定の介護事業所の利用を誘導する『囲い込み』や、家賃だけでは満足できず、過剰な介護保険サービスの提供を前提としたビジネスモデルも存在します」
オープン化と質の向上で付加価値のあるサ高住を
現在の登録戸数は順調に増え続けているが、いずれは供給が需要に追いつく。土地活用、ビジネスとしてサ高住を考えれば、競争が厳しくなった時でも選ばれ続ける付加価値をつけておきたい。そのためのヒントは、「スマートウェルネス住宅・シティ」だと髙橋理事長は語る。
これは高齢者、障がい者、子育て層など多様な世代が交流し、たとえ重度の要介護状態となっても住み慣れた地域で安心して暮らしていけるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援を総合的に提供する地域包括ケアと、コンパクトな街づくりを一体的に進める構想を指す。この壮大なプランの中で、サ高住を単に高齢者の住まいとするのではなく、自治体が整備補助事業などを通じて適正な立地へと誘導し、「サ高住の共用部や併設される医療・看護・介護関連の施設を地域住民に開放する『開かれたサ高住』にしていくことが大事」と髙橋理事長は提案する。
国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会」座長
さらに、地域における生活支援サービスの提供を行う生活援助員の育成・積極活用や、要介護度が重度化した際の地域医療・介護サービスとの適切な連携の確保、誰もがアクセスできるサ高住登録情報の充実・改善など、まだまだ工夫を重ねられる余地もある。
今回、高齢者住宅の専門家と税務のプロに話を聞いたが、両氏の意見が一致するのは、「サ高住の運営を成功させるためには、地域のニーズを徹底的にリサーチすること」という点だ。これには誰も異論はないだろう。髙橋理事長が続ける。
「サ高住の建設・運営のノウハウと経験があって信頼もできるデベロッパー、ハウスメーカーにマーケティングは任せる。良質なサービス事業者選びもこうしたプロのネットワークを活用するとともに、地元自治体を訪ねたり、インターネットを駆使したりして自ら情報を求めていくことが重要です」
サ高住は社会的資産としての位置づけが高い。自分で築き上げてきた財産で地域貢献したいという良心があったとしても、仮に悪徳業者と組んでしまうと、その志が地域へ還元されることはない。10年、20年先を見据えた提案をしてくれるパートナー選びこそが、土地活用としてのサ高住成功への近道かもしれない。