職員が告白、「介護業界」隠蔽体質が招く大量離職 元会社員の転職組が出世して事なかれ主義に

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写真はイメージです。本文とは関係ありません(amadank/PIXTA)

「利用者のことを考えられるまともな職員から辞めていく。それが今の介護の現状です」

介護歴14年、都内で介護職に従事する田中さん(仮名・30代)はこう嘆息する。

厚生労働省が発表したデータによると、2019年時点での介護従事者の数は約211万人。2000年は約55万人だったことを踏まえると、20年間で約4倍に膨れ上がった。しかし少子高齢化が加速する日本において、2040年には約280万人の従事者が必要だという概算も出ている。

外国人の非正規雇用の増加、一部職員による利用者への暴力行為、職員が転職を続けざるをえない構造とは。現場の声に耳を傾けると、介護を取り巻くリアルが見えてきた。

退職理由は人間関係のもつれ

田中さんは神奈川、都内の施設を転々としてきた経歴を持ち、現在の職場が5施設目だ。もともとは関西の出身だが、映像関係の仕事を志し上京。現在は、映像関連の作品を制作しながら介護職で生計を立てている。

この14年で5施設目という数字は、「業界では多くもなく少なくもない」という。退職理由はいずれも人間関係のもつれだ。そのうち2度は、横柄な上司を殴打したゆえの退職だった。殴ったという行為に対して後悔はあるというが、田中さんの退職を機に不満を抱えていた職員が大量離職したことは、施設にとっては良かったはずだと振り返る。

「当時のリーダーは、マニュアル通り以外のことはするな、という人でした。『この利用者は生意気だから放っておいていい』『この人の家が払っている金額ではこれくらいの介護でいい』と言ったことを平気で職員に言っていた。利用者にあざがあることを発見し、職員から暴行を受けていたであろうことを報告しても、『黙っていればわからないから』と聞いた時は呆れかえってしまいましたね」

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