大成建設、前代未聞「ビル工事やり直し」の内幕 高層ビルの工事で虚偽報告と精度不良が発覚

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施行不良が発覚した札幌市のビル
札幌市で建築中の高層ビルで精度不良などが発覚した。組み上がった鉄骨を解体して建て直す異例の事態に(写真:共同)

「嘘やろう」。ゼネコン関係者が一様に、耳を疑う事件が起きた。

スーパーゼネコンの大成建設は3月16日、北海道札幌市で建築中の高層複合ビルにおいて、鉄骨の精度不良と発注者への虚偽申告があったことを公表した。発注者であるデベロッパーのNTT都市開発が今年1月に現場を視察した際に、不審な点に気づいた。これを発端に、施工不良と数値の改ざんが発覚。建物の鉄骨部分でおよそ80カ所、コンクリートの床スラブで245カ所の精度不良があった。

【2023年4月5日14時08分追記】初出時の建物の鉄骨部分の改ざんのカ所について修正しました。

地上26階(高さ約116メートル)、地下2階のこの高層ビルには、ホテルやオフィス、商業施設が入居予定。だが、発注者が定めた品質基準を満たしていないため、今回、地上部分の鉄骨を解体して建て直す。高層ビルは2024年2月に竣工予定だったが、2026年6月末に延期される。事件の責任をとって、取締役・建築総本部長の寺本剛啓氏と常務執行役員・札幌支店長の平島信一氏が3月末に辞任する。

現場ではおよそ15階まで鉄骨が組まれており、工事全体の22.8%まで進んでいた。「15階まで組み上がっていた鉄骨をぶっ壊して、いちから建て直すなんて、前代未聞だ」と、準大手ゼネコンの幹部は驚きを隠さない。

大成建設のベテラン社員からも「事件の傷は深い。当社の品質に対する評判も悪くなるだろうし、NTT関連の仕事は当面、ほとんど入ってこなくなるだろう」と嘆きの声が漏れ伝わってくる。

今回の事件発覚を受けて、大成建設の株価は大幅に下落。17日の終値は4070円と、前日比8.2%減となった。株価チャート上で「窓」を開ける(前日のローソク足と当時のローソク足との間に隙間が生じること)ほどの落ち込みとなった。

2007年「橋崩落」以来の大事件

「またやらかしたか」。今回の事件について、ある業界関係者はそう漏らす。大成建設は2007年に、ベトナムで建設工事中の橋(カントー橋)が崩落する事件を起こした過去がある(カントー橋は鹿島などとの共同施工)。今回は大成建設にとって、この惨事以来の大事件と言える。

ゼネコン関係者があきれるほどの異例の事態となった今回の建て直しは、虚偽報告と精度不良という2つの問題について、複数の事情がからんで発生した。経緯を詳しく見ていこう。

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