「非正規は仕事をしない」公務員の分断を生む根因 「公務員制度の歪み」が両者の理解を妨げている

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非正規公務員
非正規公務員の苦悩に対し、正職員にも思うところがあります。分断はなぜ生まれるのでしょうか(写真:mits/PIXTA)

先日公開した筆者の記事「『正職員に嫌われたら終わり』非正規公務員の苦悩」に関して、正規の公務員とみられる読者から、以下のような趣旨のコメントが寄せられた。

〈正職員はひんぱんな異動や残業に耐えているのに、非正規公務員は嫌な仕事を正規に押し付ける、やる気のない人が多い。中には多くの賃金をもらっている人もいる。非正規だけがかわいそうと印象付けないでほしい〉

「給料分の仕事しかしない」には理由がある

九州の自治体で3月まで、非正規の「会計年度任用職員」として、ある支援機関の相談員を務めていた鈴木さん(仮名・50代)は、「正職員が『非正規は仕事をしない』と不満を持つのはわからないでもない」と話す。

特に働き始めて3年目、5年目などで有期雇用の期限が終わりに近づくと「来年以降はこの職場にいない」と割り切って、負担の重い仕事を別の人に回したり、好きなときに年休消化の休みを取ったりする人もいるという。

「ただ、正職員と同じ仕事をしているのに月収10万円そこそこで、翌年も継続して働ける保証もないとなれば、大抵は『給料分働けばいい』と思うのではないでしょうか」

鈴木さん自身は「相談に来る利用者が、不利益を被ってはならない」という思いから、身を入れて業務に取り組んできた。しかし非正規の同僚からは「あなたは仕事をしすぎですよ」と水を差され、正職員からは「週4日勤務って魅力的ですよね」と言われる。

「正規非正規にかかわらず、やる気のある人は仕事をするし、しない人はしないので、『どちらが悪い』とは言えません。ただ正職員は仕事をしなくても雇用が守られ、待遇もいい。仕組みの中に格差と差別があるので、お互いに信頼関係を築けないのです」

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