只見線に雪月花、東急は四国「観光列車」新時代へ 他社線での営業運行が全国各地で動き出した

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JR西日本の大路洋司理事・東京本部長、JR四国の西牧世博社長、東急の髙橋和夫社長、JR貨物の犬飼新社長
四国・瀬戸内エリアにおける新たな観光列車の運行に4社で取り組む(左から)JR西日本の大路洋司理事・東京本部長、JR四国の西牧世博社長、東急の髙橋和夫社長、JR貨物の犬飼新社長(記者撮影)
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「JR四国、JR西日本、JR貨物、東急の4社が3月27日に都内で共同会見をします」――。3月16日、こんな内容のリリースが発表された。鉄道ファンならこの4社の組み合わせにピンとくるものがあるはずだ。

普段は伊豆エリアを走る東急の豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」が2020年から北海道でも運行している。この北海道クルーズの組み合わせはJR北海道、JR東日本、JR貨物、そして東急。運行区間はJR北海道の路線で、JR東日本が電源車を東急に譲渡し、JR貨物が車両を北海道まで運んだ。車両を保有する東急は旅行商品としての企画・販売、およびサービスを行う。

このパターンを当てはめれば、ロイヤルエクスプレスが北海道に続き、四国でも運行するのか。こんな疑問を広報担当者にぶつけたが、「今は言えません。当日までお待ちください」と、笑顔でかわされた。

ロイヤルエクスプレスが四国へ

はたして、この予想は的中した。4社が協力して四国・瀬戸内エリアにロイヤルエクスプレスを走らせる。27日の会見で東急の髙橋和夫社長は「2017年から伊豆で、2020年からは北海道でも走らせた。さらに全国展開したいという想いがある」と話す。

一方、JR四国の西牧世博社長は「鉄道で地域の観光を盛り上げたい」という考えのもと、「伊予灘ものがたり」などの観光列車を運行してきたが、いずれも「基本的には2〜3時間の旅で、クルーズトレインは運行していない」。こんな両者の間でロイヤルクスプレスを四国に走らせる計画が持ち上がるのは自然な流れだった。JR四国は運転業務のほか、駅や地域でのおもてなしも担当する。「豪華なツアーのノウハウを学んで今後につなげたい」と、西牧社長が期待する。

その後、JR貨物とJR西日本の協力も得られた。JR貨物が岡山までの車両輸送と四国エリアを走る電気機関車の提供を行い、JR西日本は岡山―児島間の運行と電気機関車の提供を行う。

ザ・ロイヤルエクスプレス
東急の観光列車「THE ROYAL EXPRESS」(ザ・ロイヤルエクスプレス)(撮影:尾形文繁)

2024年1〜3月に計6回の運行を予定している。東急・社会インフラ事業部クルーズトレイン推進グループの松田高広統括部長によれば、行程は3泊4日。岡山を出発した列車は1日目に高松・琴平エリアを観光し高松で宿泊、2日目は松山エリアを観光し、松山で宿泊、3泊目はバスも併用しながら今治、しまなみ街道で観光・宿泊、最終日に岡山に戻るというルートを検討中。料金は「北海道のコース(82万円から)と同程度かやや高め」を想定しているとのことだ。

北海道では非電化区間も運行するためロイヤルエクプスレスは自走せずディーゼル機関車が牽引することになったが、今回の運行ルートは電化区間なので本来なら自走は可能なはず。だが、「四国内に狭隘なトンネルがあり、ロイヤルエクスプレスがパンタグラフを上げたまま走行できないので、電気機関車に牽引してもらうことになった」(松田統括部長)。

今回の取り組みが成功すれば、翌年以降に四国エリアでの第2弾もありうるとのこと。冬〜初春は四国、春〜初夏は伊豆、夏に北海道、秋に再び伊豆といったエリアをまたぐ通年の運行パターンが確立できそうだ。「もしディーゼル機関車の協力が得られれば、高知などの非電化区間の運行も検討したい」と松田統括部長は意気込む。

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