中国自動車市場「2月も販売低迷」で高まる危機感 ガソリン車の人気急落、EVも先行き楽観できず

✎ 1〜 ✎ 1195 ✎ 1196 ✎ 1197 ✎ 最新
拡大
縮小
EVメーカーの値下げ競争には最大手のBYDも参入した。写真は値下げキャンペーンの対象車種(BYDのウェブサイトより)

中国の自動車市場で販売低迷が続いている。中国汽車工業協会が3月10日に発表したデータによれば、2月の新車販売台数は197万6000台と、数字のうえでは前年同月比13.5%増加。前月比でも19.8%の増加を記録した。

だが、これは特殊要因による見せかけだ。前年同月比の増加は、2022年2月に春節(中国の旧正月)の連休が重なり、販売店の営業日数が少なかったため。前月比の増加は、2023年1月の販売台数が(中国政府の補助金打ち切りなどの影響で)激減した反動にすぎないからだ。1月と2月の合計で見ると、販売台数は362万5000台と前年同期比15.2%減少している。

販売低迷の主因はガソリン車の人気急落だ。EV(電気自動車)を中心とする新エネルギー車は、1月と2月の合計で93万3000台が売れた。成長の勢いこそ鈍ったものの、前年同期比20.8%のプラスを維持している。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

EVメーカーが値下げ競争

とはいえ、新エネルギー車も先行きは楽観できない。アメリカのテスラは2023年1月6日、中国市場での主力車種の大幅値下げを発表。「モデル3」のベースモデルの希望価格を26万5900元(約520万円)から22万9900元(約450万円)に、「モデルY」を同28万8900元(約565万円)から25万9900万元(約509万円)に引き下げた。

これをきっかけに、EVメーカー各社は熾烈な値下げ競争に突入した。例えば中国のEV最大手の比亜迪(BYD)は、3月末までに同社の「宋Plus」シリーズを注文した顧客が88元(約1722円)を支払うと、納車時の支払いから6888元(約13万4802円)を割り引くキャンペーンを打ち出した。

「中国の自動車産業は、クルマの電動化やスマート化を進めるために多大な研究開発投資を迫られている。そのため業界の利益率は低下しており、価格競争はそれに拍車をかけることになる」。中国汽車工業協会の副秘書長を務める陳士華氏は、2月の販売データの発表会見で危機感を示し、次のように述べた。

本記事は「財新」の提供記事です

「完成車メーカーが単純な値下げ競争に走るのは、その場しのぎの策略だ。各社は自動車産業の発展の潮流に沿った製品開発に取り組み、技術や品質、サービス、ブランド力を磨き、健全な市場競争に努めるべきだ」

(財新記者:顧昭瑋、余聡)
※原文の配信は3月11日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT