日本は洋上風力発電でもっと野心的な政策が必要 世界風力エネルギー会議幹部が語る日本の課題

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洋上風力発電の導入でヨーロッパはさらに先を行く(写真・Monty Rakusen/getty images)
日本が打ち出した「2050年カーボンニュートラル」(脱炭素化)を実現するうえで、洋上風力発電の導入は最大の柱の一つだ。2040年には30~45ギガワットの導入という目標を掲げ、入札手続きやサプライチェーンの構築が始まった。ただ、ヨーロッパや中国はさらに先を行く。日本が洋上風力発電を導入、拡大するのに必要なことは何か。世界風力エネルギー会議(GWEC)で洋上風力発電グローバルヘッドを務めるレベッカ・ウィリアムズ氏にインタビュー取材した。

 

――2022年の世界の洋上風力発電の導入状況について教えてください。

速報値だが、2022年の導入量は2021年比で約5割減となった。これは中国での固定価格買取制度(FIT)の終了を間近に控えた駆け込み特需の反動によるもの。水準としては過去2番目の高さだ。洋上風力発電の市場は世界的に見ても力強く成長しており、特にアジアにおいて成長が著しい。詳しい数字や今後の見通しは3月27日の週に発表する予定だ。

――2022年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻し、世界のエネルギー情勢は一変しました。洋上風力発電導入への影響をどのようにとらえていますか。

エネルギーの安定供給、電力確保の重要性の認識が高まっており、多くの国が再生可能エネルギーの導入を加速化している。ヨーロッパ連合(EU)はウクライナ侵攻後の2022年5月にロシア産化石燃料からの脱却計画REPOWER(リパワー)を取りまとめた。その後も一連の政策を通じ、風力発電についてもさらなる推進政策を進めている。ウクライナ侵攻を機に世界的規模で天然ガス価格の高騰およびガス争奪戦が勃発したことで、洋上風力発電は世界規模でより魅力的な分野になっている。

製造能力の不足問題克服は可能だ

――アメリカと中国の間での経済摩擦も激化し、ハイテク分野ではデカップリングと呼ばれる現象も生じ始めています。洋上風力発電では中国企業がマーケットリーダーになっています。今後デカップリングによって成長が阻害される懸念はありませんか。

中国の風車メーカーは現在、中国国内の需要への対応で手いっぱいだ。輸出にはさほど力を入れてこなかった。むしろ、多くの国で洋上風力発電の導入を本格化しようとしていることによるプラスのインパクトのほうが大きい。たとえば、アメリカで2022年に成立したインフレ抑制法は、洋上風力発電の拡大にとって力強いインセンティブになっている。オーストラリアも非常に野心的な洋上風力発電の推進計画を発表している。

――鋼材や非鉄金属など原材料価格の高騰や、市場の急激な拡大に製造能力拡充が追いついていないといった問題も指摘されています。

原材料価格の高騰は短期的にはマイナスインパクトがある。ただ、それは洋上風力発電分野に限らない。原材料の高騰は、契約当事者間で解決策を見出さなければならない課題だ。他方、サプライチェーンにおける製造能力の不足への対応はむしろ今後の中期的な課題であり、政府が正しい政策を行えば解決できる。

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