「奨学金960万円」39歳彼が選んだ激し過ぎる人生 「上を見てもキリがないが下を見てもキリがない」

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奨学金960万円を借りて大学院まで進学した高瀬聡史さん(仮名・39歳)。努力を重ね、次のステージに進むたびに、周囲との生まれの格差を感じてきたようです(写真:すとらいぷ/PIXTA)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「銀行はお金を貸すときに厳格に審査をしますよね。将来ちゃんと返済できるのか、わざわざ計画書まで提出させてモニタリングをして。しかし、奨学金の場合は相手が学生ということもあってそこまではせず、書類のやり取りで成立してしまう……それが、今の奨学金問題の一因だと思います」

そう語るのは、大手コンサルティング会社に勤務する高瀬聡史さん(仮名・39歳)。「機会があれば日本学生支援機構(JASSO)のコンサルをしてみたい」と述べる彼のクライアントは、誰もが知る大手企業から国の機関など幅広く、自身の年収は4000万円を超える。

北海道の激動の時代に幼少期を過ごす

そんな高瀬さんだが、この連載に登場するということは、当然ながらこれまで奨学金のお世話になってきたということだ。しかも、彼の借りた額は、奨学金第一種(無利子)で960万円とかなり高額である。

奨学金借りたら人生こうなった
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その背景にあるのは彼が北海道出身であること、父親が建設や土木を生業にしていたことだ。

「子どものときに北海道拓殖銀行が経営破綻したり、夕張市が破綻したり、地元にさまざまな公共事業を持ってきていた政治家が失脚したり、幼少期の少年の人格形成に多大な影響を及ぼすような事件がたくさん起きていました」

激動の少年時代を経て、中学卒業後は地元の高等専門学校に進んだ。

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