「大小便で満杯に」災害時トイレ問題をどうするか 被災者が安心して使える「快適トイレ」の普及を

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東日本大震災から12年。改めて災害時のトイレ問題について考えます(写真:NPO法人日本トイレ研究所提供)

広範囲にわたって甚大な被害をもたらした東日本大震災から12年が経ちます。この災害から私たちはたくさんのことを学びました。なかでもトイレは、声に出しにくくデリケートなテーマであるため、これまで見過ごされていた問題でした。

発災から数カ月経った頃、私はトイレの調査で仮設診療所の駐車場にいました。そこに車いすの高齢の女性が付き添いの方と一緒に来られました。

目の前にあるのは段差のある仮設トイレです。土足で利用しているので、地面も床面も汚れています。すると、その女性は車いすから下りて、四つん這いになって段差を上がっていったのです。

おそらく女性や付き添いの方はこのことを誰にも言っておらず、またこのようなことを目にした人はほとんどいなかったのではないでしょうか。結局、問題は無かったことになっていました。こうしたトイレ問題がたくさん起きていたことは想像にかたくありません。

私たちは被災された方々が、安心してトイレを使えているだろうか、困りごとはないだろうか、という視点を持つ必要があります。今回は、災害時のトイレ事情や一人ひとりができるトイレの備えについて紹介します。

3時間以内に約4割がトイレへ

最近は地震だけでなく、大雨や大雪、暴風、寒波などによる自然災害が頻発しています。災害時にもっとも優先すべきことは、命を守ることです。その場で身を守り、安全な場所に素早く避難することが求められます。

では、その次に必要になるものは何でしょうか? 被災者も支援者も頭に思い浮かべるのは、おそらく「水と食料の確保」だと思います。生きていくためには水や食料が欠かせないので、それを確保することはとても重要です。

ですが、過去の災害における調査結果を調べてみると、発災直後は別のニーズが生じていることがわかります。下図は、熊本地震、東日本大震災、阪神・淡路大震災において、発災から何時間後にトイレに行きたくなったか、という調査結果です。

何時間でトイレに行きたくなったか
発災後、何時間でトイレに行きたくなったか (調査:阪神淡路大震災・尼崎トイレ探検隊/東日本大震災・日本トイレ研究所/熊本地震・岡山朋子大正大学人間学部人間環境学科)
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