5万回斬られた男「福本清三」名脇役を支えた信念 日本一の斬られ役、「ラストサムライ」にも出演

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ハリウッド映画『ラストサムライ』にも出演した福本清三(左)(写真:Album/アフロ)
主役の強さを際立たせるド派手な斬られっぷりで「日本一の斬られ役」という異名をもつ俳優、福本清三(1943~2021)。喜劇王・チャップリンの演技から刺激を受け、斬られる技に磨きをかけ、次第に評価を高めていく。映画『ラストサムライ』ではトム・クルーズと共演し、2013年には『太秦ライムライト』で主役を演じた。そんな彼を支えた信念とは?
※本稿は『道をひらく言葉 昭和・平成を生き抜いた22人』から一部抜粋・再構成したものです。

15歳で日給250円の大部屋俳優に

60年以上にわたって時代劇の「斬られ役」として活躍してきた俳優・福本清三。主役の強さを際立たせるド派手な斬られっぷりで「日本一の斬られ役」と呼ばれた。数えきれないほどの時代劇に出演し、「5万回斬られた男」の異名を持つ。

「いかにそのリアル感を出すか、斬られたようにね。主役がスパッと切って、こっちがコテンと(簡単に)死んだら、絵にならないし。バッと斬られたらガーッと(リアクションして)ズテン!(と倒れる)というような、そういうお芝居を入れて、見てる人が『あっ、ほんまに斬られたな』と思うようなアクションをするのが僕らの仕事だと思って」

福本は1943(昭和18)年、兵庫県生まれ。6人兄姉の5番目。中学卒業後、京都の米穀店に奉公に出るが、照れ屋で愛想よく接客ができなかったため、見かねた親戚の紹介で、京都・太秦にある東映京都撮影所で働きはじめた。

仕事は雑用でもいいと思っていたが、放り込まれたのは役名すらつかない端役の俳優たちの控室「大部屋」だった。当時は映画の全盛期、年間100本以上の映画がつくられていて、エキストラが足りなかったのだ。福本は15歳で当時は500人近くいた日給250円の大部屋俳優になった。

「初めは死骸役だったんですよ。先輩がパッと斬られてから、『お前、代わりに寝とけ』『はい』といって死骸なんですよね」

最初は斬られる役ではなく、斬られた後の役を演じた。

「僕らはそこまでいかないわけです。薄目をあけて、こうやって主役の斬り方の上手さとか、斬られる人の技を(見ていた)、俺だったらこう倒れたいな、とかね。そういうことを思いながらね」

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