「ラシーン」今見直したいレトロスタイルの素質 パイクカーの流れを汲む日産のチャレンジ

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1994~2000年にかけて販売された日産「ラシーン」(写真:日産自動車)
20~30年以上経った今でも語り継がれるクルマが、続々と自動車メーカーから投入された1990年代。その頃の熱気をつくったクルマたちがそれぞれ生まれた歴史や今に何を残したかの意味を「東洋経済オンライン自動車最前線」の書き手たちが連ねていく。

1980年代後半から1990年代前半にかけて、日産自動車が「パイクカー」というキャッチコピーとともに、レトロデザインのコンパクトカーを次々に送り出して話題になったことは、多くのクルマ好きが知っていることだろう。

いずれも初代「マーチ」のプラットフォームやパワートレインをベースとしたもので、「ミニ」をモダナイズしたような2ボックス2ドアの「Be-1」、上下2分割のリアゲートを持っていた「パオ」、キャンバストップを備えた2+2クーペの「フィガロ」が相次いで送り出された。商用車の「エスカルゴ」もあった。

Be-1は台数限定だったのであっという間に完売となり、購入者がプレミア価格で中古車市場に出すなど、社会現象にもなった。よってパオとエスカルゴは受注期間限定に変更。フィガロは2万台を何回かに分けて抽選で販売する方式に変えた。

パイクカーの中でも、作りがもっとも凝っていたフィガロの価格は200万円弱で、当時の国産コンパクトカーとしては高価だったものの、同じエンジンを積むマーチ・ターボの2倍以内に収まっていた。

日産のパイクカーが販売されていたのは、バブル経済がピークだったころだ。バブルが弾けるとフィガロは販売を終了し、パイクカーの歴史も幕を閉じた。でも個人的にはもう1台、流れを汲む車種があると思っている。

1993年の東京モーターショーで参考出展され、翌年12月に発売された「ラシーン」だ。

1993年の東京モーターショー参考展示モデル(写真:日産自動車)

レトロタッチなクロスオーバー

車名はかつて航海で使っていた羅針盤からの造語。ベースがマーチのひとクラス上の「サニー」に代わったことで、ボディサイズは全長3980mm×全幅1695mm×全高1450mmとそれまでのパイクカーよりやや大きく、リアドアを持つ5ドアとして実用性を高めていたが、レトロタッチのデザインであることは共通する。

車体の架装が高田工業で行われていたことも、パイクカーと同じだ。高田工業はイタリアのカロッツェリアのような会社で、日産の系列会社というわけではなく、いすゞ自動車「ミュー」、スバル「ヴィヴィオT-Top」なども手がけていた。

発売当初は全車1.5リッターエンジン+4WDで、5速MTと4速ATが選択できた(写真:日産自動車)

写真で見ておわかりのとおり、ラシーンはクロスオーバースタイルをいち早く取り入れてきた。そのスタイリングは、当時日本で人気のSUVだったジープ「チェロキー」XJ型の影響を受けたのかもしれない。チェロキーもまた、「ラングラー」と比べるとクロスオーバー的だったが、ラシーンはそれよりももっとカジュアルだった。

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