「歴史的な円安」が示す、"日本の国力低下"の深刻 キーワードは「金利」と「国力」

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一方で、東アジアの地政学リスクは高まっていく。人口を減らし高齢化させ貧困化させてしまうときに、安全保障上のリスクも高まるのだ。それに加えて、東南海トラフ地震、富士山噴火、首都直下地震などの大規模な災害も予想される。そういう国の通貨を誰が使用し保有してくれるだろうか? 日本人も含めてだ。

一方で社会は安定しているが、極度に失敗を恐れ、新しいことにリスクを取ってチャレンジしていかない。貧すれば鈍するで、ますますリスクを取りにくくなってきている。

2019年までは外国人観光客も外国人労働者も順調に増えていたが、コロナ禍で鎖国状態が2年以上続き、もともと鎖国が好きな島国日本が、外国に対してオープンになるのもおっくうになっている。

円安でも日本にいながら外貨が稼げる観光業も、水際対策の緩和が遅れ、海外諸国より復活が遅れている。ただ、世界経済フォーラムも認めたように、日本の観光力は世界一なので外国人観光客の受け入れから外貨を稼ぎ、多様性に慣れていってほしい。

国を開いて外国人を取り入れていくしか日本が国力を取り戻す現実的な手法はない。数学的生物学的に見て、オーガニックな人口増加(純粋な日本人による人口の自然増)は望めないのだ。

「国力低下」の日本に迫る脅威「中国」

そうして、日本の国力が落ちている中で、めきめきと力を強めている近隣国がある。中国だ。

中国は日本にとって最大の貿易相手国でもある。中国への輸出額は17兆9800億円(2021年)で、アメリカへの輸出額よりも大きい。輸入金額も20兆3800億円で、どちらも全体の20%以上。輸入に関しては24%と全体の約4分の1を占め、およそ1割のアメリカの2倍以上の数字だ。

この記事を読んでいる読者の中にも今まさに直接、間接的に、中国を相手にビジネスをしている人たちが大勢いることだろう。中国とのビジネスの関係性がなくなったら経済的な損失は大きいことも、十分理解しているに違いない。

中国との問題は絶えないが、ビジネス上は今すぐお付き合いをやめるわけにはいかない。ほぼ同じタイムゾーンの中にある人口約14億3000万人を捨てるわけにはいかない。

しかも最近はいくつかのテクノロジーでは世界最先端に近くなっている。そして、現在、中国に在留する日本人は家族を含めて13万人を超える。

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