イタリア産「生ハム」がしばらく食べられない理由 サイゼリヤの名物「プロシュート」も止まったまま

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生ハム
もどかしさを感じている関係者、消費者も少なくないだろう(写真:Sunrising/PIXTA)

イタリアからの生ハムの輸入停止が長期化している。イタリア産の生ハムが出回らなくなっており、ファミリーレストラン「サイゼリヤ」では「プロシュート」「熟成ミラノサラミ」など、かつての人気メニューの姿を見かけなくなっている。代わりにイベリコ豚などスペイン産の輸入が伸びているが、イタリア産の数量減を補うには至っていない。

イタリア産の生ハムの輸入が途絶えている理由はイタリアで家畜伝染病(「アフリカ豚熱」)が蔓延したからだ。2022年1月にイタリアでアフリカ豚熱に感染したイノシシを確認。そしてその後に養豚場でも感染した養豚が見つかった。農林水産省はイタリアからの豚肉、プロシュート、パルマ、サンダニエーレ生ハム、コッパ、パンチェッタ、サラミ等含む豚肉加工品全般の輸入を停止した。

有効なワクチンや治療法が確立されていない

日本国内でも豚熱が話題になったことがあったが、国内のそれと違いイタリアで発見されたアフリカ豚熱は別物。やっかいなことにアフリカ豚熱は有効なワクチンや治療法が確立していない。豚らは発熱や全身の出血性の病変を生じる。

そもそもこのアフリカ豚熱とは豚やイノシシに感染。ダニからの媒介、感染した家畜との直接接触により広がる。日本では「家畜伝染病」に指定されている。

2022年1月から顕在化したこのアフリカ豚熱問題が長期化している。ただでさえ、2022年2月からはロシア・ウクライナ戦争の影響で原油価格が上昇し、さらに航空ルートも迂回を強いられ、物流費も高騰している状況だ。

日本ではこのアフリカ豚熱は発生しておらず、日本はアフリカ豚熱の発生国からは豚肉の加工品を原則として輸入停止としている。当初は日本の流通上に在庫が残っていたからいいものの、在庫が底をつくといよいよ入手できなくなる。

残念ながら現時点ではイタリアからの全面的な輸入再開の目処はたっていないどころか、アジア他国でもアフリカ豚熱の発生が相次いでいる状態だ。他国からの輸入も滞る可能性がある。各飲食店や大手チェーンなどはイタリア製生ハムの使用量を減らしたり、他製品等で代替したりせざるをえない。また、代案としてはスペインやフランスなどの生ハムを輸入する場合がある。

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