ウクライナ侵攻、知られざる「文化財」破壊の深刻 この1年で240カ所が被害、保護は時間との戦い

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ウクライナのオデーサにある、映画史上最も有名な階段ともいわれる「ポチョムキンの階段」(写真:Traveling Freeman/PIXTA)

文化への関心の高いフランスのメディアをはじめ、欧州メディアはロシアがウクライナに侵攻して1年が経つ中、ウクライナ国内ですでに美術館や博物館、歴史的建造物が破壊され、ウクライナが保有する芸術的財産の保護が時間との戦いに入っていると伝えている。

パリに本部を置くユネスコ(国連教育科学文化機関)の公式発表では2022年2月24日以降、今年2月15日までのウクライナ危機により、105の宗教施設、18の美術館、86の歴史的または芸術的評価のある建物、19のモニュメント、12の図書館など、計240件の被害が確認されたとしている。

オデーサの歴史地区を「危機遺産」に指定

ユネスコはパートナー組織とともに武力紛争の際の文化財の保護に関する1954年のハーグ条約の規定に沿って、衛星画像分析を含む独自のデータ評価メカニズムを使用し、被害状況の正確な把握を客観的に行っている。また、信頼できる複数のソースから集められた被害状況も加え、調査の精度を高めている。

1月25日には、ウクライナの港湾都市オデーサの歴史地区を「危機にさらされている世界遺産(危機遺産)」リストに登録した。オデーサ中心部には映画『戦艦ポチョムキン』に登場した、映画史上最も有名な階段ともいわれる「ポチョムキンの階段」(現プリモルスキーの階段)が含まれる。

危機遺産リストへの登録をめぐっては、パリで開催された世界遺産委員会の臨時会合で21カ国中6カ国が賛成票を投じ、14カ国が棄権、ロシアは反対票を投じた。

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