子ども発達支援の企業が給付費「不正受給」の疑い 書類偽造で無資格職員配置か、パワハラ疑惑も

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総合療育センターつくばの教室
職務経歴を偽造されたBさんが勤務していた総合療育センターつくばの教室(記者撮影)

放課後等デイサービス(放課後デイ)を運営する茨城県つくば市の「総合療育センターつくば」が、無資格の職員を児童指導員として事業所に配置するため、虚偽の職務経歴が書かれた証明書を偽造して同県に提出していたことが東洋経済の取材でわかった。不正に給付費を受け取ることが目的だったとみられる。

放課後デイは、発達障害などがある6〜18歳の子どもを放課後や休日に受け入れる福祉サービスだ。総合療育センターつくばは、フランチャイズを含め約200カ所の放課後デイを展開する業界大手「こどもプラスホールディングス(HD)」のグループ会社。こどもプラス直営事業所の元職員によると、偽造行為は総合療育センターつくばの幹部職員が主導して実行されたという。

近年、放課後デイの事業者は急増している。2021年の事業所数は約1万7000カ所で、制度が創設された2012年から約6倍に増えた。その一方、無資格の職員配置による給付費の不正受給が発覚し、行政処分を受ける事業所は後を絶たない。背景には、利益を優先する民間企業の参入が増え、専門的な人材の確保が不足していることが指摘されている。今回の偽造行為にも、複数の民間企業が関わっていた疑いがある。

発達障害の子どもたちの成長を手助けするはずの放課後デイで今、何が起きているのか。

職員の「実務経験」を偽造

「偽造されたこの書類を書いたのは自分です」

こどもプラス直営事業所の元職員のAさんは、神妙な面持ちでこう話した。Aさんが偽造したと証言する書類は「実務経験証明書」。2019年の初めごろ、当時、総合療育センターつくばで勤務していたBさんの名前と住所、総合療育センターつくばとは関係のない、つくば市にある別の放課後デイの事業所名、そこでの勤務期間などを手書きで記入したという。

偽の実務経験証明書を作成された被害者であるBさんは、次のように話す。

「2022年9月、Aさんから突然『Bさんの実務経験証明書を偽造してしまった』と打ち明けられました」

驚いたBさんは偽の証明書が提出された茨城県庁に行き、実物を見せてもらった。すると、総合療育センターつくばに就職する前の2017年3月1日から同年11月30日までの9カ月間は、別の放課後デイの事業所で勤務していたことになっていた。

「私は2017年10月末まで運送会社の正社員として仕事をしていたので、この事業所で勤務できるはずがありません。この事業所の名前も住所も知らなかった」(Bさん)

偽造されたBさんの実務経験証明書
こどもプラス直営事業所で勤務していたAさんは、Bさんの「実務経験証明書」を偽造したと証言した(記者撮影、画像は一部加工)
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