フグ獲れない大阪で「フグ料理」が名物になった訳 商人たちの創意工夫で「安くて・うまい」を提供

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大阪名物でもあるふぐ料理(写真: Ayleeds / PIXTA)

冬の大阪における名物料理といえば、てっちりにてっさといったフグ料理。懐に優しいリーズナブルな値段で提供しているのも、大阪のフグ料理店のうれしい特長です。

毒をもった危険な魚ということで、大阪では明治時代以降外食店におけるフグ料理提供が禁止されますが、人々は規制を無視してフグを食べ続けていました。

しかしながら、明治時代には現在ほどのフグ人気はなかったようです。明治20年頃の大阪には、ふぐ料理を出す店は1軒しかなかったそうです。

 “その時分に大阪に只の一軒だけ河豚を食べさす店がおました(中略)そこで延童と言ふ役者が河豚に當つて死んだので有名だした”昔噺浪花之味 福禄壽老 『食道楽 1932(昭和7)年1月号』)

ところが、鉄道などの交通手段が発達し、人々がフグ料理の本場九州や中国地方、あるいはフグが解禁されていた神戸に旅行に行くようになると、次第にフグ人気が高まっていきます。

 “それが、大正時代になりまして、あっちこっちを旅してくる人が増えてまいりますと、ふぐほどうまいもんを、なんで大阪だけは食うたらいかんと言うのや、こらちとおかしいやないか、ということになりまして”(吉田三七雄『食いだおれ』)

フグを人気者にした「てっちり」

1930(昭和5)年の湯朝竹山人 『食通耳学問』に“大阪では至るところで河豚が賞美されてをるやうです”とあるように、昭和初期の大阪にフグブームが巻き起こります。

フグを人気者にしたのは、従来の大阪にはなかった新しい料理法、フグをゆがいて橙の果汁と醤油(現在でいうところのポン酢しょうゆ)で食べるという、九州中国地方の伝統的料理法「ちり鍋」でした。

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