中国EC大手「京東」、物流施設REITを上場の背景 物流センター資産の証券化で341億円を調達

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京東集団は物流センター3カ所の資産を裏付けにしたREITを組成し、上場させた(写真は嘉実基金管理のウェブサイトより)

2月8日、中国の民営企業では初めての物流施設REIT(不動産投資信託)が上海証券取引所に上場し、17億5700万元(約341億円)の調達に成功した。電子商取引(EC)大手の京東集団(JDドットコム)が、資産運用大手の嘉実基金管理と共同で組成した「嘉実京東倉庫物流インフラ施設証券投資基金(京東物流REIT)」がそれだ。

京東物流REITは、河北省廊坊市、湖北省武漢市、重慶市の3カ所にある物流センターの資産を裏付けにしている。それらの総建築面積は約35万1000平方メートル、総評価額は合計15億6500万元(約304億円)だ。物流センターのテナント入居率は3カ所とも100%で、平均賃借期間は5~6年と業界平均の3年を上回っている。

これらの物流センターは直近3年間の損益が黒字であり、年平均の営業キャッシュフローもプラスだ。京東物流REITの説明資料によれば、2023年の分配金の予想利回りは年換算4.29%となっている。

資産を圧縮しキャッシュフロー改善

京東集団は中国のEC大手のなかで自社物流に早くから注力し、(中国全土で稼働中の)物流施設の総利用面積は2400万平方メートルを超える。だが、物流施設の開発・運営を手がける子会社の京東智能産業発展集団(JDプロパティ)が建設した自社物件は、そのうちの3分の1強にすぎない。

逆に言えば、(親会社の)京東集団の賃借ニーズが大きいだけに、京東智能産業発展集団の物流施設は経営の安定性が高い。それを裏付けにした物流施設REITも、安定した利回りが期待できる。

物流施設は典型的な装置産業だ。初期投資の回収期間が長く、経費率も高いことから、事業規模の急拡大には巨大な投資リスクが伴う。だが、物流施設の資産を裏付けにしてREITを発行し、投資家の資金を広く集めることができれば、資産の圧縮とキャッシュフローの改善につながる。

本記事は「財新」の提供記事です

「物流施設の不動産を対象にした投資商品は景気変動に強く、リスク回避商品の性格を持つ。資産としての特長からも証券化に適しており、金融商品との親和性が高い」。複数の業界関係者は、財新記者の取材に対してそう解説した。

(財新記者:楊錦曦)
※原文の配信は2月8日

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