静岡リニア、知事「首相宛て意見書」訂正のお粗末 長期債務残高を理解せずJR東海の指導を要請

拡大
縮小
記者会見でリニア計画推進を口にする川勝知事だが…(静岡県庁、筆者撮影)

静岡県の川勝平太知事は、岸田文雄首相宛「リニア意見書」でJR東海の長期債務残高について「風評被害」を引き起こしかねない重大な誤りを犯した。さらに、その誤りをつじつま合わせでごまかした訂正文を再び、岸田首相宛てに届けるお粗末な失態を演じた。

ところが、リニア意見書の中の川勝知事の“真っ赤な嘘(うそ)”はそのままである。その“真っ赤な嘘”を見逃してしまえば、いつまでたっても南アルプストンネル工事は着工できない。

姑息な「つじつま合わせ」

1つ目の嘘は川勝知事が2023年1月24日に送った岸田総理宛ての「リニア意見書」の中で、現在のJR東海の経営状況が危機的であると糾弾したことだ。

『JR東海の長期債務残高「6兆円」問題』というタイトルの1項目で、『現在のJR東海の長期債務残高は健全経営の限度「5兆円以内」を優に超えている』と事実誤認をして、政府による検証を岸田首相に要請したのだ。(現在のJR東海の長期債務残高は「4.95兆円」)

「鉄道最前線」の記事はツイッターでも配信中!最新情報から最近の話題に関連した記事まで紹介します。フォローはこちらから

2010年5月の国交省交通政策審議会中央新幹線小委員会で、JR東海は『長期債務残高を「5兆円以内」とすることが適切かつ必要』と説明したのは事実だが、その後、2016、17年の2カ年で非常に有利な財政投融資「3兆円」の借り入れを行うなど、健全経営を保っていることを2023年2月1日記事(静岡リニア「財務諸表を読めない知事」JR東海を糾弾)で紹介した。

筆者の指摘で静岡県は誤りを認めたが、『現在のJR東海の長期債務残高』に「見通し」のひと言を加え、『現在のJR東海の長期債務残高見通し』と、姑息なつじつま合わせの訂正でごまかした。その訂正だけで済ませたため、『国に提出した事業計画と明らかに異なる事態です。政府による検証が必要である』などJR東海の経営に疑問を呈した文言はそのまま残ってしまった。

次ページ中間駅の費用を問題視?
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT