日本が難民申請者を「犯罪者」扱いする異常さ 「帰りたくても帰れない」外国人を強制送還

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スリランカ人女性が亡くなって1年の際、東京入管前をデモ行進する人たち(写真:共同)
帰りたくても帰れないーー。母国を追われて日本に来たものの、難民認定されずに入国管理施設に長期収容される外国人たちがいる。彼らを「強制送還」しやすくするための法改正が行われようとしている。
「国際的な人権基準を満たしていない」として、2021年に国連からの意見や野党の批判を受け、成立が見送られた「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の改正案。政府が入国管理施設に長期収容される外国人の存在を問題視し、帰国を拒む外国人への対応の厳罰化を盛り込んでいた。
その後名古屋の入管施設でスリランカ人女性の死亡事件が起き、入管行政への批判が高まったことも相まって、廃案となった。しかし今年の通常国会で、2021年の法案の骨格を維持した改正案が再び提出される見込みだ。
この動きに難民など外国人の生活支援に携わる団体は、警戒感を強めている。国内の難民支援・保護に取り組む認定NPO法人難民支援協会(JAR)で、国会議員や省庁への働きかけを行う赤阪むつみ氏に、2021年時点の改正案について課題を聞いた。

きっかけはハンガーストライキ

――なぜ、政府は入管法を改正しようとしているのですか。

きっかけは2019年6月、長崎県にある入管施設で収容中の男性(40代)がハンガーストライキによって死亡したことに遡ります。

入管施設でハンストによる死亡者が出たことや、ハンストの目的が収容の長期化に抗議するものだったことから、入管の長期収容の実態に大きな注目が集まりました。

出入国在留管理庁(入管庁)はその4カ月後に「収容・送還に関する専門部会」を立ち上げたのですが、部会の趣旨の中で「難民申請中の人を強制送還できないことが長期収容の原因」だとしました。これを受けて改正案では、難民申請中の人の送還を可能とする条文が盛り込まれました。

しかしそもそも、現行の入管法自体にさまざまな課題があります。裁判所による審査がないまま入管の裁量だけで入管施設に収容でき、無期限収容が可能であることや、入管施設の中で適切な医療を受けられないなどです。

改正案はそれらを放置したうえで、難民申請者に対して厳しい措置を設けたことが問題です。

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