老老介護の限界を感じた娘が出した「2つの選択」 明け方に何度もオムツ交換…負担を軽くしたい

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自宅で過ごす患者さんを診る中村医師。在宅医療の様子(写真:筆者提供)
コロナ禍や高齢化の影響で需要の高まりをみせている在宅ケア。「住み慣れた自宅で療養したい」「最期まで自宅で過ごしたい」という患者や家族の思いを支えるのが、患者宅を訪問して在宅医療や訪問介護などを行う在宅ケアだ。
これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期は家で迎えたい」という患者の希望を在宅医として叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)が、若い人たちにも知ってもらいたい“在宅ケアのいま”を伝える本シリーズ。
10回目のテーマは、老老介護の見守り方について。老親から困りごとを引き出すコツや、希望と現実との折り合いのつけ方などもまじえて解説する。

80代で老老介護中の親を、近居で見守りながら都内で暮らしている50代のA子さん。母親は5年ほど前に進行性の神経変性疾患であるパーキンソン病と診断され、現在はA子さんの父親が介護しながら、自宅での生活を続けています。

A子さんは仕事仲間で、私は彼女の両親に医師として直接、関わっているわけではありません。ですが、A子さんが直面している悩みが、老老介護を見守る多くの家族に共通するものだと感じたため、今回ご紹介したいと思います。

早朝に起こされ「オムツ替えて」

あるとき、A子さんから「母親の介護をしている父親の負担が増している」と相談がありました。聞けば、就寝中の母親の尿漏れが原因で、早朝に父親が起こされることが続き、頭を悩ませていると言います。

昼間は何とか自力でトイレに行ける母親ですが、夜はぐっすりと寝込んでいます。しかし、就寝中でも夜間頻尿は活発で、母親は毎朝明け方に尿漏れで目を覚ましては父親を起こし、「オムツとシーツを交換してくれ」と訴えるのだそうです。

自身も高齢で、体の不調も出てきている父親です。妻の願いとはいえ、明け方に起こされることが毎日ともなれば、どうしても疲労が溜まってしまいます。

父親もA子さんも、何とか尿漏れを防げないかと、市販品の中で最も吸水性の高いパッドとオムツを選び、さらにオムツの上から防水パンツを履かせるなどの対策を講じたものの、どうしても尿漏れが起きてしまいます。

夜間の排泄介助を誰かに頼めたらいいのですが、現行の介護保険制度に夜間巡回は含まれません。そのため、例えば夜間のオムツ交換を誰かに依頼するとなると、自費の介護サービスを別途契約する必要があり、毎日ともなれば大きな負担額になります。

現在、A子さんの母親が毎月支払っている介護保険利用料は、下の表の通り、1割の自己負担で1万4000円ほどに抑えられています。

次ページA子さんの両親の介護保険料
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