「日銀新総裁は誰でもいい」と言える3つの理由 「危機」にある日銀に本当に必要なものは何か

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政府が日銀の次期総裁に指名するとされる共立女子大学教授・東京大学名誉教授の植田和男氏(2006年撮影:尾形文繁)

日銀総裁人事は、決して政治問題化してはいけない。

これが今回の日銀総裁人事で重要な唯一のことで、あとはどうでもいい。なぜなら、次の日銀総裁は誰がなってもいいからだ。
理由は3つある。

日銀は「本当の危機状態」にある

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

第1に、「リフレ派」という「異常で魔術的なブーム」が去り、リフレ派も「MMT(現代貨幣理論)派」もこの世から消え去ったので、オカルト的な金融政策を日銀が打ち出す可能性がゼロになったからだ。

第2に、日銀を取り巻く状況は極めて厳しい。政治的な圧力や金融市場の投機家の圧力があろうとなかろうと、それ以前に、純粋な金融政策を採りうる道がほとんどない。

誰が意思決定しようと選択肢はなく、道は決まっているからだ。政治や金融市場との駆け引き、戦いということであれば、総裁の個人的なカリスマ、キャラクターが重要になってくるが、もはやそんな余地はない。黒田東彦総裁就任当時(2013年3月)とは異なり、本当の危機に追い込まれているからだ。これが第3の理由だ。

本当の危機だから、むしろ、個人の能力はどうでもよくなる。チームで対処するしかない。そのときに、日銀全体が一枚岩になる必要があり、そのためには、ハッとするような政策を打ち出したり、個人的なスタンドプレイによる「奇跡的な力による一発逆転」を願ったりしてはいけない。また、そういう淡い期待を日銀内部にも、市場や世間にも抱かせてもいけないのだ。だからこそ、サプライズのない、普通の人事が望ましいのだ。

結果的に、FED(アメリカの中央銀行)のトップであるジェローム・パウエル氏は、この条件を満たすことになった。

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