中国、春節明けの「労働力確保」にあの手この手 ゼロコロナ緩和で出稼ぎ労働者が一斉に帰省

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ゼロコロナ政策の緩和を受け、今年の春節は出稼ぎ労働者が一斉に帰省した(写真はイメージ)

2023年の春節(旧暦の正月、今年の元日は1月22日)は、中国政府がゼロコロナ政策を緩和した後の初の休暇シーズンとなった。都市部で働く農村出身の出稼ぎ労働者たちは、行動制限の解除を受けて一斉に帰省。その影響により、都市部の企業は春節明けの労働力の確保に追われている。

出稼ぎ労働者への依存度が高い沿海部の大都市では、企業や人材斡旋会社が春節明けに他省に出向いて人材募集活動を行うのが慣例だ。その開始時期が、今年は明らかに早まっている。

例えば浙江省台州市では、地元政府の主導で1月26日(旧暦元日の4日後)に16の人材募集チームが組織された。これらのチームには191社の地元企業が参加し、多数の出稼ぎ労働者を送り出している雲南省、貴州省、四川省などの21カ所を訪れて採用活動を行った。

同じく浙江省寧波市も、1月27日に地元の輸出企業11社を組織して貴州省に赴き、採用活動を実施した。浙江省義烏市に至っては、春節が始まる前に6つの人材募集チームを全国各地に派遣したほどだ。

一方、春節に帰省した出稼ぎ労働者の呼び戻しに力を注ぐのが、広東省深圳市や福建省福州市などだ。深圳市は出稼ぎ労働者が無料で乗車できる貸し切り列車を手配。1月26日、その第1便が400人超の労働者を乗せて広西チワン族自治区の桂林市を出発した。福州市は無料の航空便をチャーターし、同じく1月26日に238人を乗せた第1便が雲南省から到着した。

100人募集しても採用は10人

だが、企業側が望む人数の労働者を採用するのは容易ではない。浙江省台州市で自動車用サスペンションの製造を手がける西格邁(シグマ)の人事担当者は、上述の人材募集チームに参加して貴州省に赴いた。

「今年の(春節後の)採用活動は例年に増して厳しい。過去2年の春節は、新型コロナの防疫措置のために多くの出稼ぎ労働者が帰省できなかった。その反動で、今年の春節は労働者がこぞって帰省し、故郷での滞在期間も長くなっている」。財新記者の取材に応じた人事担当者は、実情をそう打ち明けた。

本記事は「財新」の提供記事です

浙江省建德市で自動車部品を製造する五星車業は、四川省広安市に出向いて採用活動を行った。しかし、目標の100人に対して実際に採用できたのは10人前後にとどまったという。

「現地の労働者は地元企業で働きたいという気持ちが強い。そこでわが社は、ベテラン従業員の紹介を通じた新人確保に力を入れている。採用が実現した場合、紹介者の従業員には1000元(約1万9129円)の特別手当を支給する」。同社の人事担当者は、財新記者の取材に対してそう語った。

(財新記者:楊錦曦)
※原文の配信は1月31日

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