高校球児の「ケガ予防」に大規模検診が始まった訳 「甲子園至上主義」による支配からの脱却

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ようやく、という感じで2022年12月18日、兵庫県高野連と兵庫野球指導者会が共催する「第1回兵庫県高等学校野球連盟 野球肘検診」が、兵庫県加古川市の兵庫大学体育館で行われた。

当日は、兵庫県高野連に加盟する160校が参加。各校「投手2人」が、スポーツドクターや理学療法士によって肘のエコー検査や、可動域のチェック、肩、腰の検査などを受けた。

「投手2人」というのは、やや物足りない感もあるが、兵庫県の高校硬式野球部員は2022年時点で5915人もいる。これだけの部員を一度に検診するのは、時間的にも費用的にもまだ難しいのだ。現時点では、県高野連が野球肘検診に踏み出したことに意味があると言えよう。

参加費無料での開催に至ったワケ

主催者側の兵庫県高野連指導者委員長の徳山範夫氏(兵庫県立須磨友が丘高校監督)は、開催までの経緯を次のように語る。

徳山範夫氏(写真:筆者撮影)

「野球人口が減少していますから、食い止めないといけないと思っていますし、時代の流れとして高校球界もアクションを起こしていかないと、とは思っていました。とはいっても県レベルで実施するのは、相当ハードルは高かったですね。当初は500円程度の参加費を徴収することも考えたのですが、第1回でうまくいかなかったら次はないという意識もあり、100%成功させるためにも、無料にしました。表立って反対の声はありませんでした。兵庫県では指導者委員会という集まりで20年以上監督が集まって話し合う機会を持ってきましたから、指導者同士の意識の共有はできていたと思います」

兵庫県高野連の髙橋滋理事長(兵庫県立加古川東高校監督)は話す。

髙橋滋理氏(写真:筆者撮影)

「公式戦の延長戦が18回から15回になり、タイブレークが実施されるなど選手の健康管理の意識が高まる中で、ぜひやりたいなと思っていました。すでに学校単位では検診を実施しているところもありますし、理学療法士がトレーナーになっている私学もあります。でも、普通の公立校ではなかなかそうはいかない。

今回、私は『全加盟校参加ですよ』という案内を出して、返事が遅れたところもあり、意識が低い学校もあるのかなと思いましたが、全校参加ができてほっとしました。こうした野球肘検診は、定期的に実施することが大事です。また野球障害は小学校、中学校の段階から発生しますから、そうした下の世代との交流も大事だと思います」

次ページ「高校生世代初の大規模検診」
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