「EV時代」の今こそ問われるホンダの存立意義 産業ピラミッド崩壊危機を成長の糧にできるか

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従来とは稼ぎ方が変わるEV時代。「EV出遅れ組」のホンダが描く起死回生策とは。(デザイン:小林由依、藤本麻衣、松田理絵)
2040年の「脱エンジン目標」をホンダが打ち出してから、まもなく2年。自ら退路を断った決断の先に何があるのか。2月6日発売の『週刊東洋経済』の特集「背水のホンダ」では、徹底取材で見えてきた社内でひそかに検討されている事業改革の全体像を描いた。

 

「世の中にはつねに万物流転の法則がある」。ホンダの初代副社長・藤澤武夫が社内で説いて回ったという言葉だ。藤澤は創業者の本田宗一郎とともに、ホンダを世界で指折りの自動車メーカーに育てたことで知られる。

万物流転のおきてがある限り、大きくなったものもいずれ衰える。つねに時代をリードする企業でなければ、その存在はあっという間に消えてしまうだろう──。「希代の大番頭」と呼ばれた藤澤の戒めは、EV(電気自動車)シフトの波が押し寄せる日本の自動車産業界に響く。

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ガソリン車に比べて部品が少なく、構造が単純なEVは異業種参入を促した。今後自動車の性能や価値を左右するソフトウェア領域の台頭も著しい。「このままだと本当に日本の自動車産業は沈没する」。あるホンダ幹部は強い口調で危機感を示す。

完成車大手を頂点とする自動車産業ピラミッドもいつまで保てるかわからない。2020年後半からの半導体不足は、その崩壊の予兆とも受け取れる。半導体大手は完成車大手の意向どおりに、増産や価格交渉に応じてくれるわけではないことが明らかとなった。

危機を成長の糧に

今年9月、ホンダは創立75周年を迎える。その歴史を振り返ると、連続する危機をうまく成長の糧に変えてきた。

超ロングセラー2輪の「スーパーカブ」や「低公害CVCCエンジン」、ミニバンブームを牽引した「オデッセイ」。これらは事業存続の危機に追い込まれた状況で生み出され、そのヒットによってホンダは窮地を脱してきた。

「つねに生き残りを問われてきたのがホンダ。トヨタと同じ戦略をホンダが取っても勝つ力はない」。ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリストの中西孝樹氏はそう話す。

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