生前贈与、暦年課税と精算課税は組み合わせよ 相続前7年間に毎年110万円をどう贈与すべきか

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贈与税の申告書の書類
2023年度税制改正で生前贈与のあり方は大きく変わった(写真:beauty-box / PIXTA)

いったい生前贈与にどう対応すればいいのか──。2023年度税制改正大綱が決定し、注目されていた相続税の改正の内容が明らかになった。

振り返ると2021年・2022年度の大綱。そこでは、「生前贈与がダメになるのでは」との懸念から、“駆け込み贈与”のブームが起こり、高い関心が寄せられていた。

生前贈与には2つの課税方式がある。現在の主流は暦年課税だ。受贈者(贈与を受ける者)1人につき、「毎年110万円」までの贈与が基礎控除とされて、非課税になる。110万円を超えた分に対しては、累進で税率10〜55%の贈与税がかかる仕組みである。暦年課税では、例えば親から子に対して年110万円ずつ10年間贈与すると、計1100万円までは贈与税がかからない。毎年コツコツと利用する人は多い。

ただし相続時、つまり親が死亡したときからさかのぼって3年以内の贈与は非課税にならず、贈与した財産が相続財産に加算され相続税を課される“持ち戻し”というルールがある。ここがミソだ。

1月30日(月)に発売した週刊東洋経済2月4日号では「大増税時代の渡り方」を特集。来るべき大増税時代に備え、生前贈与による相続税・贈与税の節税法から、全国「駅別」相続税額MAPまで、賢い資産の守り方・資産の増やし方を盛り込んでいる。

贈与してから7年超生きないと意味なし

週刊東洋経済 2023年2/4特大号[雑誌](大増税時代の渡り方)
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2024年1月1日から適用される今回の改正では、暦年課税では相続財産に加算される期間が相続前3年間から相続前「7年間」へと延長された。つまり相続税の対象になる期間が3年間から7年間へと拡大されたのである。

2024年以降、贈与にかかる加算期間は、1年間ずつ、過去へと段階的に延長されていく。2028年1月1日に相続(親が死亡)する場合、相続加算は2024年1月1日以降の贈与から4年間だ。2029年死亡なら相続前の5年間で、2030年死亡なら相続前6年間。2031年死亡であれば、相続前7年間の贈与が相続財産に加算されてしまう。

生前贈与の相続加算を避けたいのであれば、「延長される2024年1月1日より前に贈与しよう」、との思考が働く。もうタイムリミットまでは1年間を切っている(例外として延長4年間に受けた贈与のうち、計100万円までは相続財産に加算されない)。

これを裏返せば、親は生前贈与を開始してから7年超を生きて、相続加算の7年間を適用されないようにしなければ意味がない、ということだ。

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