「私は日本人」と語ったアメリカ人歌手が炎上の訳 日本人にはわかりにくい文化の盗用という問題

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グウェン・ステファニ
日本文化に対する愛を語ったインタビューが炎上してしまった歌手のグウェン・ステファニ(写真:AP Photo/Chris Pizzello)

アメリカの歌手、女優、ファッションデザイナーであるグウェン・ステファニ(53歳)が、ファッション誌『アルーア』のインタビューの中で、「My God, I'm Japanese and didn't know it(自分がこんなにも日本人だとは知らなかった)」と発言し、大きな議論となっている

もちろんこれは、ステファニが民族的に日本人だという意味ではない。彼女はイタリア系アメリカ人であり、明らかに「白人」である。これは、彼女が日本文化の「超ファン」であることを表現する意図があったのだろう。

ステファニが、東京・原宿のストリートファッションを彷彿とさせるスタイルの日本人・日系人女性4人に囲まれてライブをしていたことは、彼女のファンであれば知っているはずだ。そして、ステファニはその4人を「ラブ、エンジェル、ミュージック、ベイビー」と呼び、人前では日本語しか話さないように要求していたこともある。

彼女は明らかに、「日本らしさ」を自分のイメージの一部にしているのだ。

アジア系編集者が感じた不快感

ところが、ステファニが自分は日本人だと何度も主張した(短いインタビューの間に何度も言っていた)ことは、このインタビューを行った『アリューア』の編集者を不快にさせた。が、それには理由がある。

この編集者、ジェサ・マリー・カラオはアジア系アメリカ人で、アメリカに住む"真の"アジア人女性である。明らかな少数派である彼女は、明らかな白人で特級階級に属するステファニとはまったく異なる経験をしているからだ。

「私は、自分の外見のせいで人種差別的な言葉を投げかけられ、ニューヨークの地下鉄で一緒に移動する父親の安全を心配し、祖父母がアジア人であるという理由で攻撃され殺されるのを見て怒りで沸騰した女性だ」と、10日に公開された記事でカラオは書いている。「私は、この活気に満ちた創造的なコミュニティの一員であると主張しながら、痛みや恐ろしさを伴う物語の部分を避けることができる人がうらやましい」。

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