北京ダックや肉まん…「中国の食」の奥深い歴史 歴史を知ると中国時代劇の楽しみ方が広がる

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(写真:ささざわ/PIXTA)
今、日本で大きな話題となっている中国時代劇。2012年に日本で放送されたタイムスリップ時代劇『宮廷女官 若曦(じゃくぎ)』が人気を博したことに端を発し、2020年放送のブロマンス時代劇『陳情令』のブームも相まって、2023年、さらなる盛り上がりを見せています。そんな中国時代劇ファンに向けた書籍『中国時代劇がさらに楽しくなる! 皇帝と皇后から見る中国の歴史』から、世界三大料理に数えられる中国の“食”の歴史を紹介します。

古代から多様な食文化が生まれた懐の深さ

中国では、稲作は1万年以上前から行なわれていたともいう。長江下流の河姆渡(かぼと)遺跡では、紀元前5000年頃の水稲の種モミが発見されている。木の実や果実、動物を飼育していた痕跡もあり、多彩な食文化を持っていたことがわかる。

一方、黄河流域は乾燥地帯で稲作に適しておらず、ヒエや麦などが畑で栽培されていた。さらに北の地域は、ステップ気候で草原が多いことから遊牧に適していた。広大な中国では、南北で別の作物を栽培しながら異なる食文化を形成していった。これが、多彩な中華料理の源流になっていったといえるだろう。

酒の歴史も古く、紀元前にはすでに生まれていたという。諸説あるが、夏の時代に儀狄(ぎてき)という人物が発明したともいわれる。儀狄は夏の初代禹王(うおう)に酒を献上したが、禹王は酒のあまりの美味しさに驚きながらも「いずれはこの酒のために国を滅ぼすものが出るだろう」といって酒造りを禁じたという。果たして、禹王の子孫の桀王(けつおう)は、酒色に溺れて国を滅ぼした。

また、次の殷王朝では、最後の王となる紂王(ちゅうおう)が、象牙の箸を作った。これを聞いた王族の箕子(きし)が「象牙の箸を作ったら、次は玉の器や犀の角の杯を作るだろう。立派な食器なら料理も水牛や象や豹の肉を載せたくなる。豪華な食器に豪華な食事となれば、粗末な衣服と粗末な家屋では満足できず、錦の衣服と豪華な宮殿が欲しくなる。象牙の箸に釣り合うものを集めていけば、いずれ国中の財物を集めても足りなくなる」と恐れた。その通り、贅沢に際限がなくなった紂王は、酒池肉林を行なって堕落し、周の武王によって滅亡している。

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