「家族解体」で教団依存を狙うカルトの悪質手口 「社会的不適応は毒親のせい」と責任を転嫁

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奈良県警奈良西署に移送される山上徹也容疑者(写真:時事)

昨年、安倍元首相の暗殺事件を起こした山上徹也容疑者が、1月13日、殺人罪で起訴された。山上容疑者の動機や背景が明らかになるにつれ、旧統一教会と政治のつながりや、旧統一教会で家族崩壊にまで至った人々の存在などが明らかになり、カルトの闇に対する関心が高まっている。ここでは、カルトに対する比較的最近の論文を手掛かりにしながら、カルトとその信者の心理を分析してみたい。

もっとも敵視される家族

カルトはその定義も曖昧であるうえ、さまざまなものが乱立しているが、いくつか共通点がある。特に過激で反社会的なカルトには際立った特徴がある。それは、家族の解体を通して、教団や教祖への忠誠心を強めるという点である。

カルトは当然、集団であるから、集団のリーダーである教祖と信者の結びつきを強め、集団全体の凝集性を強めたいという思惑が働く。その際、信者が別の重要な集団に属していると、それが邪魔になってくる。このときもっとも敵視されるのが「家族」である。

したがって、カルトは信者の家族との結びつきを壊そうとするのである。そして、カルト自体が新たな「家族」となり、教祖は絶対的で不可侵な「父」「母」となる。信者はすべてその「子ども」である。

信者の原家族との絆を弱めるための方法は、さまざまである。例えば、親は悪魔であると教え込むのは、よくあるカルトの手口である。宗教的なものに強く心を惹かれる人々は、社会的に何らかの不適応を感じている人が多く、それを親や家族のせいにすると、本人は自責の念を持たなくて済むようになり、心が軽くなる。そして、責任を転嫁した親や家族に対して敵対心を抱くようになり、家族から離れることで自分は問題を克服できると信じるようになる。

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