フランス人が自己主張しない人を大事にしない訳 「オテル・ドゥ・ミクニ」三國シェフが学んだこと

70歳で新たな夢を実現しようと踏み出した料理界のカリスマ・三國清三シェフのこれから(写真:keiphoto/PIXTA)
時代の寵児と言われながら、37年間、第一線を走り抜け、名店「オテル・ドゥ・ミクニ」を今年閉じることになった料理界のカリスマ・三國清三シェフ。70歳で新たな夢を実現しようと踏み出した「世界のミクニ」のこれまで、そしてこれからは……。本人みずから綴った感涙の自伝『三流シェフ』より、何者かになろうとして懸命にもがくあなたへ、熱きメッセージをお届けします。
包丁を握らせれば実力は一瞬でわかる
店を辞めるとき、シェフはサティフィカを書いてくれる。サティフィカの意味は証明書。雇用主による人物証明、あるいは推薦状のようなものだ。
たとえばこんな内容だ。
「何年何月から何年何月まで私の厨房で働いたことを証明します。彼は当方の料理法をたくさん学びました。私は彼の熱心な仕事ぶりを高く評価します。私は彼を同業者たちに推薦し、彼が将来立派なキャリアを築き上げていくことを祈っています」
重要なのは、その後に続くシェフのサインだ。誰の厨房で働いたのかがそれでわかる。三つ星がつくようなレストランの厨房で働くには、当然のことながら高い技術力を要求される。サティフィカはその証明書でもある。さらに言えば、彼らはフランス中に名を知られた料理人だから、お互いをよく知っているし、友人同士であることも珍しくはない。あのシェフが保証するなら間違いないと信用される。ぼくはそういう切り札みたいな三つ星のサティフィカを最終的に5通持っていた。
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