台湾有事なら日本も軍事介入迫られる合意の意味 日米外務・防衛の閣僚会議「2プラス2」真の狙い

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台湾有事
日米同盟やアジア太平洋の安全保障にとって重大な意味を持つ合意ながら、岸田政権の説明も大手メディアの報道もあいまいだ(画像:Andreanicolini/PIXTA)

1月12日に行われた日米の外務・防衛の閣僚協議「2プラス2」では、日本政府が昨年末に決定した国家安全保障戦略(防衛3文書)で保有を決めた、「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の運用に向けて協力を深めることなどが合意された。

個別の合意事項について解説する報道が充実している割に、今回の2プラス2が日米同盟やアジア太平洋の安全保障にとってどのような意味を持つのか、ニュースからは正直なところよくわからない。

一言でいえば、アメリカは今回の2プラス2で、ある目的に向けて一歩進むことに成功した。それは、台湾有事の際にはアメリカ単独ではなく日米共同で軍事介入することである。アメリカ側が特に歓迎を強調しているのが、アメリカ軍と自衛隊との一体性を強化する取り組みであることから、それがうかがえる。第2次世界大戦後から現在に至るまで、アメリカは地域紛争に軍事介入する場合には、必ず同盟国との共同介入という形式にこだわってきた。

ベトナムとイラクをめぐる同盟国との相克

アメリカの軍事介入の事例としてすぐに想起されるのは、ベトナム戦争(1950年代~1973年)、湾岸戦争(1991年)、イラク戦争(2003~2011年)だろう。実はどの事例でも、アメリカはできる限り多くの同盟国と共同での軍事介入を望み、さまざまな試みを行っている。

(1)ベトナム戦争

ベトナム戦争の起源は、太平洋戦争末期に日本軍に占領されたフランスの植民地インドシナ(現在のベトナム、カンボジア、ラオス)で、日本降伏後に共産主義系組織の指導者ホー・チ・ミンがベトナムの独立を宣言したが、植民地を維持したいフランスがアメリカの援助を求めたことにある。だがフランスは、アメリカに戦費の大部分を肩代わりしてもらいながらホー・チ・ミン軍と戦うも勝てず、1954年にインドシナを手放した。

ソ連との冷戦下で、インドシナが共産化すれば日本を含むアジアの他の国々も共産化する、という「ドミノ理論」を信じていたアメリカ政府は、フランス軍が撤退する前にインドシナに軍事介入しようとする。だが、アメリカ議会から同盟国との共同介入が条件だとされ、イギリスに協力を要請するも拒絶されて実現しなかった。

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