米国が喜ぶ岸田首相の「安倍化」加速している事情 日本の新たな安全保障・防衛戦略が示すこと

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岸田首相は13日、バイデン大統領と首脳会談を行う(写真:Andre Malerba/Bloomberg)

岸田文雄首相は1月13日、アメリカの首都ワシントンを訪問し、ジョー・バイデン大統領と日米首脳会談を行う。日本の新首相によるアメリカ訪問は通常、就任後すぐに行われるが、岸田首相の場合、なかなか訪問する機会がなかった。

昨年11月にカンボジアで開催された東アジア首脳会議の際にも首脳会談を行っており、バイデン政権と岸田内閣間ではほぼ絶え間なく接触が続いている。しかし、ホワイトハウスを訪問するということは通常、緊密な同盟国であることを意味する。バイデン政権は日本における岸田首相のリーダーシップが不安定であることを十分承知しており、そのイメージを改善することに躍起になっている。

バイデン政権が発表した異例の声明

岸田首相にとって、今回の訪米は正念場である。首相はイギリス、フランス、イタリア、カナダを訪問し、5月に自身の地元広島で開催される主要国首脳会議(G7サミット)に備える。少なくとも、この日程であれば、しばらくは日本の指導者が変わることはないだろう。

そして日本の首相がつねにそうであるように、岸田首相もお土産を携えて登場する。今回の場合は「国家安全保障戦略」「防衛戦略」「防衛費倍増計画」という3つの安全保障・防衛政策文書だ。バイデン政権もこれを歓迎し、「岸田首相と日本の世界におけるリーダーシップ」を支持する異例の声明を発表した。

アメリカのメディアや専門家は、これらの文書を日本の安全保障政策の劇的な転換、数十年にわたる「平和主義」の放棄、第2次世界大戦後見られなかった野心的な軍事的役割の主張として大々的に報じた。しかし、実際には、この文書は日本の方向転換ではなく、故安倍晋三元首相の下ですでに行われた変化のペースを加速させるものである。

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