ロシアの大規模攻勢を跳ね返すウクライナの自信 「全領土回復」で米欧との意思が一致、軍事支援強化へ

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2022年12月21日、米国議会でスピーチを行うウクライナのゼレンスキー大統領(左、写真・ 2022 Bloomberg Finance LP)

ウクライナ侵攻は2023年に入り、大きな局面を迎えそうだ。2022年8月末に始まったウクライナ軍による反転攻勢で主導権を奪われていたプーチン政権が、早ければ2023年1月末から2月にも大規模な逆攻勢に打って出る可能性が高まってきたからだ。

もともと大規模な反攻作戦開始を計画していたウクライナ軍は、これを奇貨として正面から迎え撃ち、撃退する方針を決定した。領土奪還と勝利に向け「最後の戦い」を合言葉に準備に入った。米欧もこのウクライナの戦略を支持し、地上戦での攻撃を想定した軽戦車の供与に初めて踏み切った。2022年2月24日に始まったウクライナ侵攻開始から丸1年を迎え、プーチン氏は政権の存亡を賭け、最大の軍事的正念場を迎えそうだ。

プーチンのメンツを潰した攻撃

この局面転換の直接のきっかけになったのは、ウクライナ軍が2022年12月31日夜にウクライナ東部ドネツク州マケエフカのロシア軍拠点に行ったロケット砲攻撃だ。宿舎への高機動ロケット砲「ハイマース」(HIMARS)による砲撃でロシア兵士多数が死亡した。ウクライナ側は約400人が死亡と主張、ロシア軍は執筆時点で死者89人としている。

この攻撃はプーチン氏にとって最悪のタイミングで起きた。兵士らが新年を祝う食事をテーブルに並べ、日付が変わる直前にプーチン大統領が行う国民向けメッセージが放送されている時刻に行われたためだ。

ウクライナ国境に近い南部軍管区司令部を訪問したプーチン氏は、演説でロシア軍が窮地にあることを将兵に率直に語りかけた。「ロシアはすべてを引き渡すか、戦うかというところまで追い詰められた。だが、降参するわけにはいかない。何一つ敵に引き渡してはならない。前進あるのみだ」と述べ、軍事作戦を続ける決意を示した。それだけに演説をあざ笑うかのようなハイマース攻撃は、プーチン氏にとって屈辱的なものになった。

ロシア国防省は公表していないが、同様の部隊宿舎などを狙ったハイマース攻撃はその後も続き、ロシア兵士の死者は1000人規模に達したとの説もある。マケエフカでの兵力損失については、すでにロシア国内で国防省への批判が出ている。

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