60歳以降のお金が心配な人に知ってほしい継投策 少し現役延ばし、公的年金受給開始の間も埋める

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年金、老後資金
年金だけで暮らしていけるだろうかという不安をお持ちの方に(写真:TY/PIXTA)
いわゆる「人生100年時代」と言われる近年、「野球のピッチャーのように完投型から継投型への転換は、老後の生活設計にも効果的」と主張するのは、社会保険労務士で第一生命経済研究所主席研究員の谷内陽一氏。著書『WPP シン・年金受給戦略』を一部引用・再編集のうえ、就労延長(Work longer)、私的年金等(Private pensions)、公的年金(Public pensions)の3者の継投で老後に備える戦略について解説する。

老後生活も「完投型」から「継投型」へ

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かつて野球界では、投手は先発完投するのが当然視されており、1974年に最多セーブ投手(一時期は最優秀救援投手)が、1996年に最優秀中継ぎ投手が個人タイトルとして制定されるまでは、リリーフ投手は「先発を任せられない二線級の投手の役割」と認識されていた。

しかし現代では、盤石なリリーフ陣(中継ぎ・抑え)を整備・構築することがペナントレースを制覇するうえで大きなカギとなる。これは、ここ20~30年の間に優勝したチームの陣容を見れば一目瞭然だ。この変革の波は、エースの先発完投が至高とされている高校野球にも波及しており、強豪校では真夏の甲子園を制覇するために複数の投手を擁することが常態化しつつある。

こうした変革は、老後生活にもほぼ同じことが当てはまる。従来は、公的年金を土台に私的年金を上乗せして受け取るという図式が長らく支持されてきた。

この図式の下では、公的年金だけでなく私的年金も終身で備える「完投型」あるいは「上乗せ型」が理想とされていた。しかし、バブル崩壊後の長期にわたる景気低迷と少子・高齢化の進展によって、私的年金では終身給付の提供が困難な環境となった。

また、わが国の私的年金は終身給付ではなく有期給付が主流となっているうえ、そもそも年金ではなく一時金での受取りが広く選択されている実態がある。

そこで近年は、完投・上乗せ型のように公的年金も私的年金も終身で備えるのではなく、

(1)まず働けるうちはなるべく長く働く
(2)公的年金は繰下げ受給を活用して終身の厚みを増す
(3)就労引退から公的年金の受給開始までの間を私的年金や貯蓄等でつなぐ

という「継投型」のスタイルが提唱されている。具体的に見てみよう。

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