三菱電機、若手・中堅が挑む「組織風土改革」の全貌 改革は道半ばだが「変化の兆し」は見え始めてる

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三菱電機が取り組む「組織風土改革」の全貌は?(写真:今井康一)
『現場力を鍛える』『見える化』など数多くのベストセラーがあり、経営コンサルタントとして100社を超える経営に関与してきた遠藤功氏は、「GAFAMにあって日本企業にないのは『カルチャー』だ。組織を強くするには『現場からのカルチャー変革』が極めて重要」だと主張する。
このたび、その「カルチャー」を真正面から解説し、「組織を劇的に強くする方法」を1冊にまとめた『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える 「現場からの風土改革」で組織を再生させる処方箋』が発売され、発売後たちまち大増刷するなど、話題を呼んでいる。
その遠藤氏が、「三菱電機、若手・中堅が挑む『組織風土改革』の全貌」について解説する。

 197件もの品質検査不正が明るみに出た 

2022年10月20日、三菱電機の品質不適切行為に関する調査委員会が最終報告書を公開した。2021年6月に品質検査不正が発覚して以来、1年4カ月もの時間をかけ、同社の22すべての製作所などを対象にした調査が終了した。

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不正発覚後の2021年8月に社長に就任した漆間啓氏は東洋経済のインタビュー「品質不正調査に1年4カ月、三菱電機社長の決意」「(時間はかかっても)全部洗い出すことが肝要だ」と述べ、膿を出し切る姿勢と覚悟を貫いてきた。

報告書によれば、品質不正は197件に上った。故意による不適切行為は112件に上る。不正の一部は1980年代から行われており、組織的な不正であると指摘された。

その多くは、現場での手間やコストを削減するために、顧客と合意した検査回数を減らしたり、合意とは異なる方法で検査を実施したりしたというものだ。

顧客には合意どおり検査した旨の試験証明書を提出していた。不正発覚後も続いていた不正も明らかとなった。

197件のうち、管理職が関与したと認定されたものは62件だった。

多くの不正は課長以下で行われており、ほとんどの所長や部長が不正の存在そのものを知らなかった。漆間社長は「(現場の従業員が)自分たちで解決すればいいとか、長年続いているからそのまま後につなごうという気持ちがあった」と述べている。

起きた事象だけを見れば、「現場の暴走」のように見えるかもしれない。しかし、実態はそれほど単純な話ではない。

現場がそうした行動をとらざるをえなかった組織全体の体質に問題があると言わざるをえない。漆間社長も「幹部や管理職が現場の目線になって寄り添えていなかった」と述べている。

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