子ども強制参加の「音楽鑑賞会」が残念すぎるワケ 大人の先回りが「子どもの成長機会」を奪う
子どもの教育の中でも悩むポイントの1つが、本人が興味のない行事や習い事に強制的に参加させるかどうか。「いつか目覚めるかもしれないから、今は興味がなくても参加させるべきでは?」と考える人も多いのではないでしょうか。もしかするとその想いが、子どもの「葛藤」と「学ぶ機会」を奪ってしまっているかもしれません。
学校改革のカリスマ、工藤勇一校長(現・横浜創英中高校長)と教育哲学者の苫野一徳さんが教育の未来について縦横無尽に語り合った『子どもたちに民主主義を教えよう──対立から合意を導く力を育む』から紹介します。
最上位目標は「誰一人置き去りにしない教育」
苫野:工藤さんは千代田区立麹町中学校から横浜創英の校長にうつられて、改めてイチから民主主義の土台としての学校づくりをされています。その中で「誰一人置き去りにしない教育を目指そう」という最上位目標を掲げておられますが、それは先生方にはすぐに理解してもらえるものなんでしょうか?
工藤:やはり個人差があります。たとえば教員たちに来年度に行う教育活動の見直しをかけてもらっているんですが、音楽鑑賞教室を「全員参加」で実施する案が上がってきたから、却下したんです。そうしたら若い教員が校長室にやってきて意見を言ってきたんです。
「校長は普段トップダウンはしないと言っているのに、なぜ私たちの案を却下したんですか!」って。
苫野:なんと答えたんですか?
工藤:「いつも言ってるでしょ。僕の仕事はみんなが考えて決定したアイデアが、最上位目標に近づく手段になっているかをチェックすることであって、半歩でも近づいていたら全部ゴー、逆行したら容赦なくストップするって。それなのに強制参加ってどういうこと? 希望者を募るなら実施していいよ」って。
トピックボードAD
有料会員限定記事
キャリア・教育の人気記事