製薬企業が医師に払うお金の知られざる最新事情 製薬マネーデータベースで見る医療界の実態

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薬とお金
公開情報をもとに医療界に回るお金の流れを明らかにする(写真:Graphs、astarkim/PIXTA)
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医療ガバナンス研究所は、医師と製薬企業の金銭関係について研究を進めている。2019年1月には、公開情報を用いて、医師が製薬企業から受け取った金を検索できるデータベースを公開した。現在、2016年度から2019年度分を公開しており、誰でも無料で検索できる(製薬マネーデータベース『YEN FOR DOCS』)。

われわれが、このようなデータベースを作成するようになったきっかけは、2012年に表面化したノバルティスファーマ社(ノ社)の臨床研究不正だ。

ノ社から寄付金や講師謝金などを受け取る見返りに、臨床試験のデータを同社に都合がよいように改ざんしていたというものだ。責任者の教授たちは処分されるとともに、引責辞任し、ノ社は行政処分を受けた。日本製薬工業協会(製薬協)は、加盟各社が医師に支払った講演料や大学などへの寄付金を公開することとし、厚生労働省も臨床研究法を制定し、利益相反の開示などを義務化した。

ノ社事件から10年が経過した。製薬企業と医師の関係はどうなっただろうか。

薬を導入する見返りに寄付講座の延長を要求?

12月12日、写真週刊誌『FLASH』は広島大学病院の糖尿病・代謝内科長が小野薬品工業に対して行った「ある要求」についてスクープした。筆者にも取材がありコメントした。

小野薬品は、田辺三菱製薬、興和創薬(現興和)とともに、2018年4月から2021年3月までの予定で開講した寄付講座に、1500万円を提供していた。FLASHは、この寄付講座の責任者を務める医師が、小野薬品の販売する糖尿病治療薬グラクティブを院内に導入する見返りに、寄付講座の延長を求めたことや、部下の医師に対し「小野薬品本社の本部長に電話をし、グラクティブの院内採用が条件で、寄付の2年延長が約束されました」などというメールを送ったことなどを報じている。

記事の通り、薬を導入する見返りに、製薬企業に金を求めたのだとしたら、不適切と言わざるをえない。東洋経済が広島大学に取材したところ、本件については、「外部弁護士4人と学内役員3人による調査会を設置して、調査を進めており、2月中をメドに作業を完了(公表)する」(広島大学広報室)という。

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