懐かしの「伝説深夜ドラマ」現在の隆盛に至る系譜 深夜ドラマは量、質ともプライム帯に匹敵へ

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エッジが魅力の深夜ドラマ(写真:takuchi masato/PIXTA)

今や一つのジャンルとして定着した「深夜ドラマ」の歴史はまだ浅い。深夜ならではのエッジの効いたテーマや大胆な表現アプローチは、多様性の時代において、また配信コンテンツとの共存(競争)においても、無限の可能性を秘めていると言える。

黎明期の深夜ドラマ 「新しいもの」を見ている感覚

1980年代後半、テレビの放送時間が深夜にまで伸びていくのと同時に、深夜帯で放送されるドラマが制作されるようになり、後に放送枠も増加していった。いわば「深夜ドラマ」の黎明期を牽引したのは、フジテレビの深夜帯「JOCX-TV2(第2フジテレビ)」で放送された作品群だったと言っていいだろう。

『GALAC』2023年2月号の特集は「よみがえれ!深夜」。本記事は同特集からの転載です(上の雑誌表紙画像をクリックするとブックウォーカーのページにジャンプします)

まずは同枠で放送されていたドラマのタイトルをざっと並べてみる。「やっぱり猫が好き」、「奇妙な出来事」(後の「世にも奇妙な物語」)、「BANANACHIPS LOVE(バナナチップス・ラヴ)」、「NIGHT HEAD」、「3番テーブルの客」等々。今も深夜ドラマの名作として記憶される作品ばかりだ。

深夜枠では1988年10月から1990年3月まで放送されていた「やっぱり猫が好き」(第2シーズンは土曜19時30分〜)は、いまだ根強いファンも多い深夜ドラマ初期の大ヒット作。もたいまさこ、室井滋、小林聡美が演じる恩田三姉妹がアドリブ満載で繰り広げる会話劇は、即興コントのようでもトーク番組のようでもあり、形容しがたい面白味に満ちていた。第1シーズン後半から脚本陣に参加した三谷幸喜の名を世に知らしめ、第2シーズンには木皿泉も名を連ねている。

当時は新進気鋭の映像作家だった高城剛が監督を務め、全編ニューヨークロケを敢行した「BANANACHIPS LOVE」(1991年)は、松雪泰子の初主演作でもあり、脚本は後に「白線流し」やアニメ「カウボーイ・ビバップ」などを手がける信本敬子。独特のカメラワークや唐突に登場するクセの強いキャラクターたち、裏の主役とも言える双子のドラァグクイーン・ジョンとポールのシニカルなやりとりなど、ドラマというよりはニューヨークのスナップショットを次々に見ているようで刺激的だった。短いシークエンスが次々と切り替わっていく構成は、TikTokなどを見慣れている今の若い世代には、むしろ親和性が高いかもしれない。

1992年にはブレイク前の豊川悦司と武田真治が超能力に翻弄される兄弟を演じた「NIGHT HEAD」がカルト的な人気を博し、映画、小説、漫画、ゲーム、アニメなどのメディアミックスへと発展。現在、テレビドラマの原作・監督を手がけた飯田譲治のオリジナル脚本で再アニメ化されているが、それを見ると30年前にドラマの二人が醸し出していた危うい色気は凄まじかったなと、改めて感心してしまった。

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