認知症の予防に「補聴器が役立つ」医学的な理由 補聴器を嫌がる人は多いが認知症予防になる

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デザイン性の優れたものが増えた補聴器(写真:metamorworks/PIXTA)
「耳が遠くなってきたな……」と感じはじめても、補聴器をつけるのに抵抗がある人も多いのではないでしょうか。愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也氏は、「難聴は、認知症発症リスクを1.6倍に引き上げます。しかし、補聴器をつければ、日常生活や日常会話でのストレスが軽減されるので、認知症を予防していくことは十分に可能です」と言います。『100歳まで生きるための習慣100選』を上梓した伊賀瀬氏が解説します。

耳が聞こえにくいことは認知症リスクを高める

もし、少しでも「耳が聞こえにくい」と感じているならば、補聴器の使用を検討してください。それだけで、QOL(生活の質)は確実に上がり、間違いなく健康長寿に寄与します。

イギリスでの調査によると、聴力に何らかの問題を抱える人は、およそ6人に1人います。2015年の日本でのアンケート調査では、難聴だと感じている人は、18歳以上で13%に達していました。

なぜ、難聴が健康長寿を阻害するのかというと、耳が聞こえにくいことは認知症のリスクを高めるからです。イギリスの医学専門誌『Lancet』によると、仮に難聴になる人が完全にいなかったとしたら、認知症になる人は今より9%も減ると試算していました。

同じくイギリスで行われた調査では、50歳以上で中等度の難聴(普通の大きさの会話での聞き間違いや、聞きとりにくさを感じる)がある人の認知症発症リスクは、1.6倍であると発表されました。

どうして難聴は認知症の原因になるのか、2つの理由が示唆されています。

1つ目は、難聴は社会的孤立につながるからです。相手の声が聞き取りづらいと、会話が難しくなり、他人と接するのが億劫になります。私の外来でも、認知症の患者さんの診察時、会話の聞き取りができない人が少なくありません。

社会的に孤立して自分の殻に閉じこもると、外界からの刺激がなくなり、また精神的なストレスを抱えて、認知症になりやすいという指摘があります。

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