日本人が「リノベーション」しかできない深刻問題 問題解決の前に課題を「発見する能力」が必要

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物事の本質にたどりつく思考力、マーケティングの本質とは(写真:adam121/PIXTA)
「問題解決の前に、課題を“発見する能力”が、いま求められている」。そう話すのは、元ネスレ日本社長の高岡浩三氏です。Uber、ダイソン、ライザップ、キットカット……革新的なヒットはいかにして生まれたのでしょうか。物事の本質にたどりつくための思考力、結果を出し続けるための仕事術とは? 同氏の新著『問題発見の教科書』を一部抜粋し再構成のうえ、マーケティングの本質についてお届けします。

「本物のマーケティング」とは

私は、人が気づいていない無意識レベルの問題をネスレでずっと考えてきました。

キットカットは1973年に日本で発売されてから、テレビCMで知名度を高めてきました。ところが、国内のチョコレート菓子の売り上げ1位はグリコのポッキーで、不動の地位を築いていたのです。

キットカットも売り上げは安定していましたが、私はそれで満足しませんでした。

そこで、キットカットの顧客は誰かを考えました。スーパーで買っていくのは主婦層ですが、実際に食べるのは10代の中高生です。

それでは、顧客である10代の中高生はどのような問題を抱えているのか。

その問題を考える少し前、私はキットカットのキャッチコピーである「Have a break,have a KITKAT.」の break とはどういう意味なのかが気になっていました。

キットカットは元々イギリスの商品なので、商品名もキャッチコピーもイギリスで考えたものです。この break にはキットカットをパキッと折るという意味と、一休みするという意味が込められていました。

それを知った時、「日本人にとっての break は何だろう?」と思い、消費者に「あなたの理想的な休憩と、嫌いな休憩を写真に撮って送ってください」と呼びかけました。

これは、枠外にある問題を見つけるためのリサーチです。

一般的に市場調査で行われるアンケートは、質問を考えている時点で大体欲しい答えが決まっているでしょう。

しかし、日本人にとっての break が何なのかは私も誰も分かりません。それに対して、「次の質問からあなたの理想とする休憩を選んでください」といった質問をつくったら、途端に枠に当てはめてしまうことになります。

次ページでは、どのようにマーケティングしたのか?
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